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Friday, December 23, 2016

映画『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』

【12月23日特記】 映画『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』を観てきた。

この映画を語るにはどうしても多少ともネタバレにならざるを得ないので、「これから観るので予備知識は持ちたくない」という人は読まないでほしい。

さて、敬愛してやまない三木孝浩監督の作品である。今回も青春恋愛ものではあるが、タイトルから想像がつくように、若干 SFフレーバー付きのファンタジーでもある。

舞台は京都(なのに、関西弁を使う人がひとりも出て来ないことにかなりの違和感はあったが)。美大に通う南山高寿(福士蒼汰)が、通学中の叡電の中で美容師の学校に通っている福寿愛美(小松菜奈)に一目惚れするところから始まる。

この場面、福士蒼汰は初々しさ、奥手さを出そうとしたのだろうが、少し作り過ぎで、やや硬い。出だしからそれがえらく気になったのだが、しかし、この映画は高寿の変化を描くのがメインだから、こういうメリハリの付け方も仕方がないのかな、と見終わってから思ったりもした。

一方、僕が小松菜奈を初めて見たのは映画『渇き。』で、このときはとんでもない新人女優が出てきたものだと驚愕した記憶がある。あの時以来、どちらかと言うと手に負えない少女、気の強い娘、扱いづらい女といったイメージが強かったが、今回の映画では心優しく気丈な女性を本当にしっとりと演じている。

後ろ髪を結ぶときのうなじとか、抹茶ロールを齧った時に唇にかすかについた白いクリームとか、今回も三木監督は小道具と小技をたっぷり揃えて女優の魅力を描き出している。

おじさんたちはこういう恋愛物をとかくバカにしがちだが、カットの割り方、光の当て方、それぞれのエピソードの綴じ方など、どれを取っても天下一品の技巧で、他の監督に任せたら絶対こんな風には撮れないと思う。

脚本は三木監督と何度か組んでいる吉田智子なのだが、例えばたこ焼きを食べる時に美味しくて足をバタバタさせるシーンが繋がって行くなど、この人は単純に台詞を連ねてストーリーを作ろうとしていないところが素晴らしい。

そもそもが高寿が愛美の折に触れての涙の理由に次第に気づいて行くという展開である。この話は台詞でしか繋いで行けない脚本家には料理しきれないだろう。

さて(以下ネタバレです)、この物語は過去に何度も使われたタイムスリップとかパラレルワールドなどとは少し違っていて、確かに新奇であり興味深い設定である。ただ、逆方向の2つの時間が接点を持つという設定は少し無理がある。

2人の時間が交差すると言いながら、実は高寿は普通に過ごしており、愛美のほうは時間が連続的に逆方向に流れているのではなく、ひとりだけ1日終わると昨日に戻るという奇妙な時間の中で動いている。これは別の世界があるというより、彼女の時間軸だけが変になってしまったという説明のほうが良かったのではないか?

しかし、それにしても、彼女の時間経過は彼との関係性の中だけでは辻褄が合うにしても、社会全般については、例えば同じ建築中のビルや大災害の現場を2人が見た時にどうなるのかというようなことの説明がつかない。

ま、これは映画に対するクレームというよりは原作に対する物言いである。ただ、なんであれ、この設定は非常に面白かったし、そこによく練られた進行が組み入れられており、この設定/進行でこそ描けるものがあったのも確かである。

また、この映画はそういうトリック的な部分の謎解きを楽しむものではないのである。種明かしは割合早い時点である。そこから先の2人の心理を描くのが主眼なのである。

この映画のタイトル表示は、始まってストーリーをだいぶ食い潰してから漸く出て来る。つまり、そこまでの部分は文字通りのアバンタイトルなのであって、この不思議な設定の説明以降がストーリーの山なのである。

そこが普通のファンタジーとは異なる点であり、この映画が面白いところなのである。

客層は9割が JK、JD を中心とした女性、1割がカップル、そして、僕と僕の6席隣にいたおじさんの2人は単なる不純物であった(笑)

時々彼女たちが涙をすする音が聞こえた。とびきり切ない話だけれど、じんわりと心温まる良い話だった。

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