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Saturday, November 26, 2016

映画『聖の青春』

【11月26日特記】 映画『聖の青春』を観てきた。

てっきり山下敦弘監督だと思って観ていたのだが、途中でどうも山下敦弘らしさがないな、と思ったら、脚本こそ山下監督の盟友とも言える向井康介が手がけているが、監督は森義隆だった。

そう言えば思い出した。僕には将棋に対する思い入れはないが、森義隆監督なら見てみたいなと思ったのだ。随分前から観る映画をリストアップしていると、いつの間にかこういう勘違いを起こしてしまう。

と思っていたら、実はもう一つ勘違いがあった。僕は森義隆監督と森淳一監督を取り違えていたのだ。森淳一監督が2009年に撮った『重力ピエロ』が良かったので、彼の名前をマークしていたつもりが、いつの間にか間違えていた。

実は森義隆監督の『宇宙兄弟』もその勘違いに基づいて見てしまったのだ。この映画を観たときの記事を読むと同じことが書いてあるので我ながら笑える。2作連続しての間違いである。もっとも『宇宙兄弟』も良い映画だったから、別に良いのだが。

で、この映画の話に戻ると、最初に驚くのは松山ケンイチの異様なほどの太り方である。人間って意志の力でこんなに急激に太れるのか、と驚いてしまう。役作りとは言え、随分体に悪そうだ(笑)

実在の棋士の話だから、主人公の村山聖八段(松山ケンイチ)も羽生善治七冠(東出昌大)も随分と本人を模倣している。でも、この太りっぷりを見ると、こんなにまでする必要があったのだろうかと思ってしまう。

しかし、パンフを読むと、単に故・村山八段が太っていたからというのでなく、彼がネフローゼ症候群という難病を抱えていたことにリアリティを持たせるためには太っている必要があったと書いてあって、なるほどなと思った。

ただ、そんなに過酷な増量ができたにも拘らず、大阪弁はマスターできなかったのかな、と少し落胆したのも確か。あるいは増量がきつすぎて、大阪弁にまで力が及ばなかったのかもしれない。

しかし、この話は坂田三吉の『王将』と同様に主人公が大阪人であったということが設定の1つのキモになっているのだ。東京の天才・羽生 vs 浪速の怪童・村山という対比である。

なのにちゃんと大阪弁が使えないというのは、他地区の人は何も感じないかもしれないが、関西人にとってはかなりのストレスである。特に大阪のシーンに出てくる役者たちがほとんど誰もまともな関西弁が喋れていない。

関西出身の役者が一人も出ていないので仕方がないのだけれど。

まあ、それは置いておいて、よくぞ将棋などという映画的な動きのない題材にトライしたと思う。その勇気は称えたいし、脚本とカメラの工夫でよくぞこれだけの起伏を与え(将棋にあまり詳しくない者にとっても)感動をもたらしたなと感心した。

テレビの将棋中継などで将棋盤を真上から捕えた画面は見たことがあるが、将棋盤を真上から映しているカメラを見たのは初めてだ。こういうところにこの映画の説得力はある。

2人が安酒場で初めて二人きりで飲むシーンはあえて2ショットは多用せず、1ショットの切り替えで進めて行く。そして羽生のカットでは画面の右端に羽生の顔があって左側には空間があり、村山のカットではその逆になる。

そういう空間が何かを物語っている気がするのである。

棋士が親指と人差指、中指を使って駒を取り上げ、やがて親指が離れて2本の指で駒を支え、それが将棋盤に打ち付けられてパチッという駒音が響く。

その駒の動きや音が何かを物語っている気がするのである。

東出昌大の演技は僕には少し表情を作り過ぎに思えたのだが、将棋ファンに聞くと羽生善治の特徴を見事に捉えてそっくりなのだそうである。

思えば東出は、デビュー以来他の役者には決して出せない独特の雰囲気を醸し出す俳優ではあるが、発声や滑舌には苦言を呈す人もおり、演技も一本調子だと酷評されることもあったが、この映画の演技は迫真と言って良い出来だったのではないか。

そして、それ以上に松山ケンイチの演技には、何かが乗り移ったかのような鬼気迫るものがあった。

もう少し早く治療を受けていれば延命したかもしれないのに、将棋にのめり込むあまりに医者にも行かず、志も達しないうちに早死してしまったバカ棋士の話であると言ったらそれまでである。ストーリー的にもそれ以上のものはない。

ただ、映画の印象としては決してそれだけで終わらせていない。そこがこの映画のすごいところだと思う。


【追記】 読み落としていたが、村山は生まれは関西ではなかったようだ。とは言え、小学校から大阪にいたとも思えない言葉遣いだったが。

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