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Monday, September 12, 2016

『拡張するテレビ』境治(書評)

【9月12日特記】 この本はテレビの歴史とモバイル機器の普及、そしてソーシャルネットワークの伸長などからメディアの現代史を振り返り、広告とコンテンツ・ビジネスの両面から今後のテレビのあり方を探るものである。

著者の境治さんとは直接交流があるので、あまり褒めると仲間による宣伝だと思われるかもしれないが、本当によくまとまった本だ。

僕自身が放送局にいて番組配信などの仕事に携わっているので、僕らが読むと知っていることが相当の割合を占めてしまうのだが、それでも改めてこうやって再構築して提示してもらうと今後のことを考える助けになるし、社内で今配信についてよく分かっていない人に対しては絶好の入門書としてお薦めしたい本である。

また、よくまとまった本というのは往々にして事実の羅列であったり、あるいはせいぜいが上手な整理に留まってしまい、そこにまるで主張めいたものがなくて非常に物足りない思いをすることが多いのだが、この本には境さん独自の理解があり、解釈があり、展望があり、提案がある。

だからこそ、この本は読む価値があるのである。

多くの知己から得たアップトゥデートな知識に、境さん自身の鋭い観察と分析を加えながら、結構クールな感じで章が進んで行くのだが、「おわりに」では突然、如何にもテレビっ子世代らしい、テレビに対する思い入れたっぷりの表現にぶつかって、彼より少しだけ年長の世代の僕も深い共感を覚えるのである。

しかし、その文中で彼はこうも書いている。

わたしたちはなぜこの、“映像が映る機械”にここまで思い入れてしまうのか。考えてみると馬鹿みたいだ。

だが、そんなただの機械、とテレビを捉えることに「本当のテレビの未来」があるのではないか。(中略)余計な思い入れをテレビから払い落とした時、そしてそれがスマートフォンと連携したりネットとつながったりした時、まだ見たことのない映像コンテンツの面白さや可能性が切り拓かれるのだろうと思う。

と。

そう、まさにそこを超えられないテレビマンがテレビ局の中には大勢いて、僕らは彼らにいろんなことを阻止されてきたのである。

僕らの後輩がそんな人になってしまわないうちに、是非ともこの本を読んでほしいものである。

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