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Tuesday, August 16, 2016

『若者離れ』電通若者研究部・編(書評)

【8月16日特記】 軽くて読みやすい本である。とは言っても、誰かが若者を暫く観察して、思いついたことを脈略なく書き綴ったような本ではない。

電通という名前を聞いて、流行を追っかけたチャラチャラしたものを想像する人もいるかもしれないが、電通総研をはじめ、この会社の研究部門はかなり本格的な組織ばかりである。

この本もその例に漏れないもので、電通若者研究部(通称ワカモン)が実際に若者たちと対話をしながらデータを集積し、それを分析した上で、我々おじさん・おばさんが若者たちとちゃんとコミュニケーションを取って豊かな社会を築くための方向性を示してくれる本なのである。

ひとことで乱暴に言ってしまうと、本のタイトルになっているように、今世間ではしきりに「若者の○○離れ」が指摘されているが、それは非常に浅く一方的な物の見方なのであって、実は世の中のほうが「若者離れ」をしてしまっているのではないか、というのが主旨である。

この本は第1章の第1節を人口ピラミッドの形状変化から書き起こしており、こういう手法を見ても、若者を俯瞰的に見ているのがよく解る。そして、次の節は「だからこそ、まずは『対話』から」というタイトルになっており、ここまで読んだだけで、著者たちがどんな態度でこの問題に対応しているかが如実に見えてくる。

そして、図解をふんだんに入れ、各章の終わりには「まとめ」があって、非常に解りやすい。

で、これを読む限り、今の若者は我々からすると大変面倒くさいスタイルで生きているようだ。

自分が気に入ったのであればウジウジ考えずにやれば良いではないか、と我々は思うのだが、彼らはそれをやることが仲間内でどう捉えられるか、世間ではどう扱われているか、などを確認してからでないと、どういう形で表現して外に出して行くかを決めないらしい。

僕なんぞは、自分が何かをやることで、まあ、友だちがゼロになってしまうのは困るが、それが自分のやりたいことで、かつ、やって構わないことだと考えるのであれば、それをやったために一生口を利けなくなる人が1人や2人出ても構わないと思っている。

僕らの世代にとって、何かをやるというのはそういうことだった。

でも、若者の世界ではそうは行かないらしい。社会全体がそういうメカニズムで動いているから、いくらおじさんが若者個人に対して「自分がやりたいのならそれで良いじゃないか」と説得してみたところで、世の中の構造を変えることはできないのである。

恐らく僕と同年代の読者は、多かれ少なかれ、面倒くさい奴らだなあ、と思うだろう。

我々にこういうのを読んで若者と正しくコミュニケーションしなさいと言うのであれば、逆におじさん・おばさんたちはこうなんだよという本を若者に読ませてくれないと、不公平のような気さえする(笑)

でも、コミュケーションというものは、もちろん一般的に対等なイメージの上に成立するものではあるが、決して見返りを前提にして行うものではない。

そういう面倒くさい奴らに対して、まずは彼らの内側を知ることによって、虚心坦懐に伝えることによって、耳を澄まして聴くことによって、そこで初めて彼らからのちゃんとした反応があって、それで初めて双方向のやりとりが成立するのである。

面倒くさくてもまず彼らの行動原理を知り、それの良い悪いはしばし置いておいて、頭ごなしではないやり方で語りかけること。──そうすることによって、僕らは「若者離れ」を免れることができるのである。

これはそのための参考書である。

この本の中にもあるように「とかく今の若者は」と十把一絡げに語ってしまうことが一番危ないのである。もちろん、若者たちが「とかくおじさんたちは」と十把一絡げに語ることも同様に避けなければならないことなのではあるが。

ま、この際どっちから歩み寄るかを駆け引きしている場合ではない。この本を読めば、きっと今までと違う感じで若者たちに語りかけたくなるのではないかな(笑)

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