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Monday, July 18, 2016

映画『セトウツミ』

【7月18日特記】 映画『セトウツミ』を観てきた。大森立嗣監督。原作があるらしい。そして、映画はその原作漫画に忠実らしい。よくもこんな話を考えたもんだという驚きと、よくもこんなもんを映画にしようと思ったもんだという感心がある。

男2人で川辺の石段に座って大阪弁でくっちゃべっているだけの映画である。しかし、定員60人の小さな劇場であるとはいえ、映画館は開演の随分前から満席になっていた。大阪ならまだしも、ここは東京・渋谷の映画館である。

くっちゃべっているだけなので、75分で終わってしまうのだが、そこに第1話から6話までと、前日譚である第0話とエピローグがあしらってある。

いつもその場所で喋っているのはセト(菅田将暉)とウツミ(池松壮亮)。ともに高校生。だからタイトルが『セトウツミ』であるという投げやりさも良いではないか(笑)

第1話でウツミは頭が良くて大学進学を目指しているが、セトのほうは大学なんぞに行けそうもないというエピソードがあったので別の高校なのかとも思ったが、学生服のボタンは同じである。

幼馴染というわけではない。高校のクラスも同じではない。ウツミは塾に行くまでの1時間半を潰す必要があり、セトは先輩と揉めてサッカー部を辞めてからやることがなく、2人の「利害が一致」したからだらだら喋っているに過ぎない。

映画を見ながら思ったのだが、大阪弁ネイティブ以外の人が見てもこの映画は相当面白いのだろうか? 僕はこの脱力系会話劇の一番の面白さは大阪弁特有の絶妙の間によるボケとツッコミだと思った。

周りの観客はときどき笑う。でも、やっぱり大阪弁ネイティブからすると、若干反応が甘いような気がする。

セトを演じた菅田将暉と、セトが片思いしている樫村(彼女はウツミに想いを寄せている)を演じた中条あやみは大阪出身なので全く違和感のない大阪弁である。しかし、池松壮亮の大阪弁は、(かなり練習はしたのだろうが、それでも)我々大阪弁ネイティブからすると少し気持ち悪い。

ところが、その微妙に変な大阪弁が、ウツミの温度の低さみたいなものをものの見事に語っていて面白い。セトの鋭角的なツッコミに対してほんの一瞬だけ遅れ気味な間も、もし狙ったのだとしたらすごいと思う。

対照的にセトはテンションが高い。賢いウツミに対して、端的に言ってアホである。よくまあそんなしょーむないことを話題にするなあと思うような話題を次から次へと持ち込んで、ウツミに軽くいなされたり袈裟懸けに斬られたりしている。

2人とも同じ学生服だが、髪型からして違う──髪の毛が流れるウツミに対して髪の毛が立つ感じのセト。黒縁メガネのウツミと眉毛剃ってる感じのセト。

ウツミは白いソックスに黒のローファー、セトはくるぶし下のソックスに赤のスニーカー。学生服の下はウツミは白のワイシャツ、セトは白のTシャツ。

──そういう対照が面白いと言うよりも、そこまで違う2人が共通の話題を、しかもあまりにしょーむない話題を延々と展開するのがおかしいのである。

画作りはあまり凝りようがない。こんな風に役者に思い切り演技をさせるだけの映画を撮ろうという監督の割り切りも見事である。

で、冒頭何がびっくりしたと言っても BGM である。タンゴ、しかもバンドネオンのメリハリの効いた、かなり本格的なタンゴ。この曲に乗ってカメラは川を遡って行き、その川辺でセトとウツミがだべっている。

なんじゃこの映像と音楽のアンバランスは?と思ったのだが、話が進み行くと、この BGM が驚くほど中味に寄り添ってくるのである。ひとことで言って哀愁。そう、バカバカしい話の中に沈殿している哀愁を、タンゴが大音響で掬い上げるのである。

宇野祥平が演じたベラルーシ人のピエロのバルーンさんまで原作の登場人物であると知って驚いた。原作者も監督も、細部へのこだわりが全体像を固めている。

おもろうて、なんか微妙にうら哀しい映画である。もう一回見たい気がする。

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