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Monday, May 02, 2016

映画『あやしい彼女』

【5月2日特記】 映画『あやしい彼女』を観てきた。

実はこれまで水田伸生監督の作品は避けてきた。どの予告編を見ても笑いが滑っているのではないかという気がしてならなかったからである。

今回初めて見て、結果から言うと別に滑ってはいなかった。僕もところどころで声を上げて笑った。阿部サダヲのような如何にもコメディっぽい人が出ていなかったのが良かったのではないだろうか。

大ヒットした韓国映画の翻案なのだそうである(僕は観ていない)。73歳の瀬山カツ(倍賞美津子)が20歳の頃の自分に戻ってしまう話。どうして戻ってしまったかのかはこの映画では重要でない(観客にもちゃんとした説明がない)。

20歳に戻ったカツを演じたのが多部未華子だ。同一人物と名乗るわけには行かないので「大鳥節子」と名乗る。オードリー・ヘップバーンと原節子の合わせ技だ(笑)

入れ物は20歳、中味は73歳というギャップのおかしさというのがこの映画のキャッチになるのだろうけれど、僕はそこがそんなに面白いとは思わなかった。

でも、とてもハートフルな物語なのである。韓国映画では若返った老婆の息子(職業は大学教授)が出ていたそうだが、それをこの日本版では幸恵という娘にして、仕事はファッション雑誌の編集長に変え、小林聡美に演じさせた。それが非常に良かったと思う。

これでカツ/幸恵/節子という三世代の女性が並び、カツ=節子/幸恵/翼(北村匠海)という親子三代が並んだ。

カツの幼馴染で彼女に淡い恋心を抱いたまま年を取った銭湯の主人・次郎(志賀廣太郎)がいて、カツのライバル的な存在としてみどり(金井克子)がいる。

こういう対照的な人物配置が却々良いのである。

そして、台本が細部でよく繋がっている。

オードリー・ヘップバーンの髪型から『ローマの休日』の内容まで、戦後間もないころから今に至るまでカツが次郎にプレゼントし続けるリンゴのエピソード、同じ小道具が二度三度色合いを変えて出てくるのが楽しい。

画も美しかった。最初のほうの銭湯の天井から斜めに撮った俯瞰での長回しの面白さ。そして、フェスでのライブのシーンがとってもきれいだったこと。

そして、若返ったので好きなことをやろうと節子が選んだのが歌だったのだが、この映画の成功のもうひとつの鍵は、音楽面がしっかりしていたことである。

翼のバンドの最初の頃のデスメタル風のおかしさはともかく、節子の歌唱力が認められて抜擢されるという設定では、彼女の歌に魅力がなければいけない。そこで素材として昭和歌謡のスタンダードを選んだのは大正解だ。

しかし、プロ・デビューとなるとオリジナル曲でという発想になるのも当然である──そういう台本の進み行きも良い。が、そこでつまらないオリジナルが流れると台無しになる。

だが、そこは心配ない。なにしろ音楽プロデュースをしているのは小林武史である。彼の書いた曲がこれまた頗る良い。そして、翼を演じている北村匠海が本物のミュージシャンで、ちゃんとギターが弾けているので説得力が増すのである。

幸恵と節子の、年齢が逆転した母娘が、両方とも涙を流しながら、互いに肩を抱き合って語るシーンは良いシーンだった。あまり他の映画ではない場面設定だ。ここでもそうだが、水田監督は結構長回しにして役者に集中した芝居をさせている。

歌のシーンもいちいち素晴らしくて、僕はパンフレットに書いてあるほど多部未華子が歌が巧いとは思わないが、でもそこには捨てがたい味があることは否定しない。聴いているといつの間にか感極まって涙が出そうになった。

で、どうでも良いことだが、多部未華子の昭和っぽいワンピがめちゃくちゃ似合っていてキュートなのである。

いちいち指摘はしないが、何箇所かご都合主義の展開もあるし、設定が綻んでいる部分もある。けれど、そこそこ面白かったし、割合軽いけれどとても良い映画だったと思う。

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Comments

こんにちは!私もこの映画を観に行きました。
韓国映画がとても良かったので、邦画版をどうしても観たくなったんです。
ハチャメチャなストーリー設定ですが、それをカバーして余りある“人情”のようなものがこの物語にはあります。
笑って泣いて、また笑って…と忙しい映画でした。
多部ちゃん、可愛かったですね。魅力炸裂です。

韓国版、日本版のそれぞれに良いところがあります。
ぜひ韓国版もご覧になってください。
ちなみに韓国版の主人公はオ・ドゥリです(笑)。

Posted by: リリカ | Wednesday, May 04, 2016 at 15:49

> リリカさん

どうもありがとうございます。

実は僕は韓国映画にほとんど馴染みがないので、「オ・ドゥリです(笑)」と言われても全くどんな人か知りませんし「(笑)」が何を意味しているのかも分かりません(笑)

機会があればまた観てみます。

Posted by: yama_eigh | Wednesday, May 04, 2016 at 20:39

オ・ドゥリは若返ったヒロインがとっさに答えた名前です。
オードリー=オ・ドゥリです(笑)。

Posted by: リリカ | Wednesday, May 04, 2016 at 22:07

>リリカさん

あ、そういう意味でしたか。てっきり韓国の女優の名前かと思ってしまいました(それくらい、韓国映画のことは知らないのですw)

つまり、オードリー・ヘップバーンのファンだという設定は原作映画からそのまま持って来てるわけですか。なるほど。

Posted by: yama_eigh | Thursday, May 05, 2016 at 14:53

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