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Wednesday, May 18, 2016

映画『殿、利息でござる!』

【5月18日特記】 映画『殿、利息でござる!』を観てきた。

僕は時代劇を滅多に観ない。事実に基づいた話であるという売り文句も、「原作がある」と同じようにしか解さず、特段の価値を認めない。

でも、監督が中村義洋であるとなると話は別である。随分前から公開を待っていた。

予告編で大体の設定は分かっていた。貧しい百姓たちが銭をかき集めてお上に貸し、お上から利子をせしめようという物語である。

何故そんな突拍子もないことを思いついたのか、どうやってそんな無理筋の計画を実現したのか?──それを巡るコメディであり、また、百姓がお上を牛耳る痛快譚だと思って見始めたのだが、コメディという見立てだけはちょっとだけ読みが外れた。

この映画はコメディと言うよりも、言わば全編が徹底的な人情噺なのであった。

そもそもは、とある寂れた宿場町が仙台藩に課せられた苦役によって年々疲弊していたという描写から始まる。

そんな時に、町一番の知恵者で茶師の篤平治(瑛太)が、今の価値にして3億円という大金を住民たちからかき集めて藩に貸し、その利子を苦役の費用に充てるという案を思いつく。

思いつくまま出任せで言っただけなのに、造り酒屋の十三郎(阿部サダヲ)が異常に食いついてくる。叔父の十兵衛(きたろう)まで引っ張り込んで、えらい力の入りようになってきた。

とは言え、そう簡単に実現するはずもない話だ。篤平治は、いろんな人に相談するうちに誰かが諌めてくれるだろうと高をくくっていたのだが、相談された人間が順番にその高邁な理想に共鳴して乗ってくる始末(笑)

そこまで来ると、篤平治も本気で取り組むしかなくなってしまう。──その辺りまでは軽い喜劇である。

だが、そこからの展開は篤平治のすったもんだの苦労を面白おかしく描くものではない。まさに善意の連鎖の物語なのである。

確かに宿場町の住民にはしみったれた商売人もいる。面倒な野心を抱いた者も混じっている。またお上には意地の曲がった役人もいる。

だが、そんな人たちも次第にみんなの努力にほだされるのである。

ここまで「ええ話」になると、若干インチキ臭くなるのが世の常である。

しかし、ここまで見事に善意が繋がり厚意が通じるとなると、それはそれで爽やかである。今の世知辛い世の中、こういう話こそが必要なのではないか?──という気にさせられるということが、この映画の成功を如実に物語っている。

脚本は中村義洋と、監督の盟友と言って良い鈴木謙一が書いている。親子・兄弟・夫婦などの微妙な関係も丁寧に織り込んだ、巧い運びだと思った。

ストーリー上でそんなに奇想天外な策が弄されるわけではなく、痺れるような名台詞があるわけでもなく、あっと驚くカメラワークがあるわけでもない。

ただ無類の「ええ話」なのである。大袈裟かもしれないが、生きる希望が湧いてくるのてある。

大勢の役者がそれぞれ良い演技でそれぞれの善意を演じ、みんなでこの美談を支えている感じが良い。

山﨑努、草笛光子、妻夫木聡、寺脇康文、竹内結子、千葉雄大、西村雅彦、きたろう、中本賢、上田耕一、堀部圭亮...。

阿部サダヲが、いつもより表情を抑えて目力を感じさせる芝居をしているのが良かった。パンフレットによると、中村監督は、阿部には「もっと目を開いて」、寺脇には「もっと抑えて」という演出をしたとある。

松田龍平の仙台藩重臣も見事だったが、フィギュアの羽生結弦が扮した伊達の若殿様が妙に嵌まっていておかしかった。

あと、中村監督のファンとしては、(最初の一声を聞いただけで分かったのだが)中村作品ゆかりの濱田岳がナレーションを務めていたのも嬉しかった。

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