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Sunday, February 21, 2016

映画『オデッセイ』

【2月21日特記】 映画『オデッセイ』を観てきた(MX4D での鑑賞)。リドリー・スコット監督作品。少なくとも僕の周りでは、観た人の評判はすこぶる良い。

で、僕も面白かった。設定と進行の勝利。これだけストーリーで押す映画も珍しい。台詞も実に見事で、全体的に脚本の素晴らしさが目立つ映画だ。

いや、もちろん宇宙の映画であるからして、特撮・CG を含めて、新奇で綺麗で壮大な画もたくさん見せてはくれる。

だが、『2001年宇宙の旅』の時代ならいざ知らず(それだけにあの映画の先進性を改めて認識するのだが)、今の僕らはもうそういう画では驚かない。それよりも、主人公が次々と課題解決して行く過程が面白いのである。

植物学者で宇宙飛行士のマーク・ワトニー(マット・デイモン)は、火星での活動中に嵐に遭う。仲間の5人の飛行士たちは、風で飛ばされて音信不通になったマークを死んだものと看做して、自分たちも命からがら火星を離れる。

しかし、マークは生きていた。そして、そのままならやがて水と食料が尽きて死ぬところを、水を作り出し、畑を作り、そこに芋を植えて自給し始める。地球との連絡も試行錯誤の後に、文字ベースでは可能になる。

そして、地球からの助けが来ることを信じ、それまで何とか生き延びる算段を日々工夫して行く。地球からの宇宙船の着陸予定地点まで、無事に移動する手段も自力で講じる。

そういう過程がめちゃくちゃ面白いのである。

しかし、一緒に行った妻は、つまらなかったとは言わないまでも、それほど面白くもなかったようだ。

理由を訊くと、「どうせ最後は助かるんだろう」と思ったから、とのこと。なるほどなあ、と思う。

僕にもハッピーエンド指向はない。予定調和は大嫌いだ。他人が「どうせならハッピーエンドの映画を観たい」とか「ハッピーエンドの本でないと読まない」などと言うのを初めて聞いた時には「世の中にはそんな人もいるのか!」と飛び上がるほど驚いたものだ。

確かに、この手の映画は概ね予想を裏切らないハッピーエンドである。だが、この映画の場合は、人智の限りを尽くしてそこに辿り着くまでの過程が面白いのである。

その過程が、ハッピーエンドという“欠点”を補う面白さになっている、と僕は思った。この映画を楽しめるかどうかは、要するにこういう過程を楽しめるかどうかなのだと思う。

僕にはよく解らない物理や化学の話がいっぱい出てきた。恐らくこの映画には科学の上での嘘はたくさんあるのだろうと思う。でも、それは決して進行を阻害しない設定上の嘘なのである。僕らはその物語の進み行きに取り込まれてしまうのである。

妻は「中国が出てきて急に胡散臭くなった」とも言っていた。それは僕も同意しないではない。しかし、一方で、なるほど僕の妻はそういう人だったと改めて思うと笑えてくる。

僕の目には、逆に、そういう話はマークの火星での生活に紛れて気にならなくなっていた。妻には科学の話があまり琴線に触れなかったということなのだろう。

この救出劇を見て感動したという観客も多分いるのだろうと思う。

しかし、僕も妻も、この映画を見終わって感動したという感じはあまりない。クライマックスでのカタルシスはそれなりにあったが、僕の場合はそんなことよりも「なるほど! そういう手で来たか!」という面白さに浸っていた。

で、もっと感心したのは、主人公たちの軽口である。

一旦はマークを見捨てて飛び去った仲間たちとマークの連絡が取れた時に、実は自責の念にかられていたはずの仲間の一人は、マークに「前からお前のことが嫌いだった」と呼びかける。「お前は所詮植物学者で、植物学なんてものは科学じゃない」と畳み掛ける。

こういうのって良いなあと思う。日本でこういうことをやると、不謹慎の最たるものとして顰蹙を買い、下手すると共同体から放逐されてしまう。

マークは NASA との交信で4文字の卑語を使い、再会した女性船長には挨拶代わりに彼女の音楽の趣味の悪さをなじる。

こういうのって良いなあと思う。こういうのって面白いなあと思う。

そういう意味では、これはある種アメリカ人気質を描いた映画であるとも言える。──あくなきチャレンジ、楽天性、そして軽口。

知恵と工夫に基づいたサバイバルの過程だけではなく、人間をも描けていたからこそ、こんなに面白かったのかもしれない。

この間亡くなったばかりのデヴィッド・ボウイの『スターマン』にはちょっと痺れたな。

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(ネタバレはストーリー紹介の後の「以下ネタバレ注意」表記以降からです) 面白かった!この映画大好き! 絶望的なサバイバルが最新科学技術や現実に基づいたリアリティ重視で描かれるにも関わらず、この地に足の着いたエンターテイメントが観客に示してみせるのは、科学と人類の進歩のポジティブな面。観た後に明るく前向きな気持ちになりました。 観終わって買い物中の嫁と合流し「...... [Read More]

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