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Monday, January 11, 2016

映画『ピンクとグレー』

【1月11日特記】 映画『ピンクとグレー』を観てきた。

加藤シゲアキという名前と顔はもちろん知っているけれど、それはあくまでジャニーズ事務所所属のタレントとしてであり、彼の書いたものを読んだことはない。その彼の小説家としてのデビュー作となった同名の小説が原作である。

行定勲監督は、とても技量の高い監督だと思うのだが、如何せん、ここのところ興行的にあまりぱっとしない。あまりに不入りが続くとオファーが来なくなるのではないかと密かに心配していたくらいだ。

しかし、その心配は吹き飛んだ。これは良い映画だった。入りはそこそこだったが、こんな作品を撮れる人を映画界が放っておくはずはないだろう。

鈴木真吾(愛称は「ごっち」、中島裕翔)と河田大貴(愛称は「りばちゃん」、菅田将暉)、石川紗理(愛称は「サリー」、夏帆)の3人は、5年生の時に大貴が関西から転向してきて以来、いつもいっしょに遊んできた同級生だ。

高校時代のある日、渋谷でごっちとりばちゃんが読者モデルにスカウトされたのがきっかけで、2人は芸能界に足を踏み入れ、卒業後も進学せずに東京に出て同居を始める。そして、途中で転校して離れ離れになっていたサリーとも偶然再会する。

暫くはエキストラの続いた2人だったが、あるきっかけからごっちはチャンスを掴み、一気に売れ始める。りばちゃんは相変わらずの端役しか回って来ず、ごっちのキャスティングとのバーターで得た台詞のある役も NG 連発で台無しにしてしまう。

ごっちとの友情が消えたわけではないが、劣等感と妬みが一緒になって屈折した思いでいるりばちゃんに、ごっちは「明日から代わってやろうか?」と真顔で提案し、その翌日、6通の遺書を残して自殺してしまう。

ここまでが前半である。ともかくロケが素晴らしい。宮下公園や青山通り、そして名もない裏道を含めて、渋谷界隈での画の切り取り方がこの監督にしかできないものになっている。

冒頭のカメラのフラッシュの放列の中で浮かび上がるサリーの顔を始め、仰角で捉えた歩道橋を駆け上がる人物(違う人物で2回出てくる)など、画の深さ、角度、光の向きと強さなど、見事にコントロールされた画作りだと言える。撮影は『共食い』や『凶悪』の今井孝博である。

そしてこの後に「62分後の衝撃」と言われる大どんでん返しがある。これはある種の叙述トリックであり、どんなに観察眼に優れた人でもどんなに推理の効く人でも見破ることはできない。

あまりに見事な展開なので、映画を観ていて1~2分は一体何が起こったのかわからなかったくらいだ。

もちろん、これは文章で書けるものではないので、原作にはない設定で、この映画のオリジナルである。

で、ここからは映像はセピアっぽいモノクロになる(ある人物を除いて)。

この映像がいつカラーに戻るのか、カラーに戻ったら恐らく映画は終わる──そう思ってじっと僕は見守っていたのだが、色がなくなるというのも一種の心象風景であり、小説解釈の深さに驚いた。

さて、残念なことに、「62分後の衝撃」のネタバレをせずにこの映画が如何に素晴らしいかを語ることはできない。役者たちが如何に素晴らしかったかを説明する際にもこのネタバレに触れるしかないので、ここでは詳しく書かない。

しかし、そういうわけで後半がらっと雰囲気が変わっていて、中島裕翔にしても、菅田将暉にしても、あるいは夏帆にしても、とても前半と同じ役者が演じているとは思えないのである。今年初めて観た邦画だが、菅田将暉と夏帆にはもう助演男女優賞を予約しておいても良いと思うほどだ。

そして、ある種のイメージを背負って後半から登場する岸井ゆきのと柳楽優弥がこれまた素晴らしいのである。

仕掛けでこれだけぐいぐい引っ張って行ける映画を久しぶりに観た。

ストーリーと言うか、結末のシーンに至るための設定を知ると「なにそれ?」と言う人はきっといるだろうけれど、でも、共感できない変人の話にはなっていないと僕は思う。結構胸に沁みるものがあった。

どのタイミングで関西弁を喋らせるかという選択も絶妙で、また、子供時代の場面で使った「しょうむな」という台詞をもう一度出してきたのも非常に巧いと思った。脚本は劇作家の蓬莱竜太と行定勲である。

これは間違いなく行定勲監督の代表作になるだろうし、観客の記憶に長く残る映画になるのではないだろうか。感服した。

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