映画『クリムゾン・ピーク』
【1月10日特記】 映画『クリムゾン・ピーク』を観てきた。『パンズ・ラビリンス』で夫婦揃っていっぺんにファンになってしまったギレルモ・デル・トロ監督。
監督名だけに釣られて、全然予備知識なく観に行ったのだが、「R-15 なので15歳未満は入れない」と場内アナウンスしている。もう少し神秘性に寄ったドラマを期待していたのだが、そういうシーンもあるのか、という感じ。
で、これは結構怖い。「3分に1回絶叫する」というようなエンタテインメント系ホラーではないのだが、要所要所でめちゃくちゃ怖い。
10歳の少女イーディスが母をコレラで亡くし、葬式の夜に母の亡霊が出てくるところから始まるのだが、相当に怖い。そして、その後時代設定が14年後になった後もそういうシーンが割合長めの間隔を置いて出てくる。
24歳になったイーディス(ミア・ワシコウスカ)は作家を夢見て毎日小説を書いている。父親のカーター(ジム・ビーバー)は叩き上げの実業家である。
そこにイギリスから准男爵のトーマス・シャープ(トム・ヒドルストン)が姉のルシール(ジェシカ・チャステイン)と共ににやってくる。
トーマスは貴族の称号こそ持っているが、屋敷は荒れ果て、金もない。自ら開発した粘土掘削機をカーターらに売り込んで資金を得ようとするが、カーターからは却々信用を得られない。
そんな中でイーディスはトーマスに恋してしまい、トーマスもそれを利するべく優しく接する。
とまあ、そんなストーリーで、見事にゴシックなドラマに仕上がっている。まあ、誰が悪者なのかは容易に見当がつく。一見恐ろしげであるが、イーディスの亡霊が出てくるのは、あくまでイーディスに警告するためだ。
そして、後半イーディスがトーマスと結婚して移った英国の屋敷でも何人かのげに恐ろしげな亡霊が出てくる。
で、問題はその後の展開である。刃物が怖い人はこの映画は観ないほうが良いと思う。結構残虐である。観ているだけでも痛い。ああ、これが R-15 なのかと納得した。
長い時間をかけてゆっくりと動くカメラ・ワークがなんとも言えない緊張感と恐怖感を煽る。廊下の奥行きや階段の高さを充分に活かしたカット割りは見事である。
ただ、残念なのは設定やストーリーが、ロマンスを絡ませてそれなりの工夫はあるものの、結局のところありきたりの後味の悪いホラーに堕ちてしまった感があること。もうちょっと深い謎とか因縁とかがあるのかと思ったらやや肩すかしだった。
『パンズ・ラビリンス』も『パシフィック・リム』もかなり面白かったし、『ホビット』シリーズの一連の脚本もよく練れていたのに、この映画での結末に向けてのある意味単純な進み行きは、ゴシックを狙ったと言ってももう少しひねりがほしかった気がする。
もちろん、セットから小道具、設定、小さなエピソードに至るまで、あらゆるところにこの監督らしい、見事に計算されたものが織り込まれているのは感じるのだけれど、切ったり刺したりするのが凄惨すぎて、それらが飛んでしまったと思う。
まあ、あんまり堅いこと言わずにエンタテインメントとして軽い気持ちで見れば良いのかもしれない。要するに、それだけ僕が期待したところが大きかったということなのだろう。
しかし、それにしても、スペイン語圏出身の監督は皆てきぱきと進行して無駄がない(笑)
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