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Wednesday, January 20, 2016

『64』(前編、後編)マスコミ試写会

【1月20日特記】 映画『64』のマスコミ試写会に行ってきた。前後編2時間ずつの映画なので昨日と今日の2日に分けて観た。瀬々敬久監督。

公開は前編が5/7(土)、後編が6/11(土)の予定なので、一般の方がご覧になるのは随分先で、今この記事を読んでも忘れてしまわれるかもしれない。ただ、公開が近づいたら、僕が褒めていたことを思い出してくれたらありがたい。

そう、これは僕の勤務先が出資している映画ではあるが、そういうことに関係なく、全くやましい気持ちなく「良かった」と言える作品である(そういう意味で、ああ、良かったw)。

そもそも僕はオーソドックスな映画よりも意表をついたトリッキーな作品が好きだ。この映画はまさにオーソドックスそのもので、そういう意味では僕の好みではないのだが、しかし、そんな僕が観ても結構面白かった。

原作は横山秀夫の代表作。残念ながら僕にとってこの作家は、1作読んだだけでその後全く手に取る気にならない人である。にも拘らず、この映画は面白かったのである。

ミステリであるだけにネタバレは慎重に避けなければならず、詳しいことは書けないが、天皇崩御によってたった7日間で終わってしまった平成64年に起きた幼女誘拐事件とその後を描いたものだ。

誘拐されたのは漬物工場を営む雨宮(永瀬正敏)の娘。松岡(三浦友和)、三上(佐藤浩市)ら県警の警察官による必死の捜査の甲斐もなく、身代金は奪われ、幼女は遺体で発見される。

事件はわずか7日間しかなかった昭和64年に起きたため、警察では64(ロクヨン)と呼ばれた。

そして、その事件が1年後に時効を迎える平成14年になって、64を模倣した少女誘拐事件が起きる。

──というのが大雑把に言うと物語の縦糸なのだが、そこに警察内部の確執(警察庁vs県警、県警の中での刑事部vs警務部)や、県警の広報と記者クラブの対立と協調の構図などを複雑に織り込んだ重厚な作りになっている。

主人公は佐藤浩市が演ずる三上であるが、彼は64の時には刑事部の刑事、今は警務部の広報官として記者クラブと相対しており、さらに、彼自身も娘が行方不明になっているという複雑な設定にしたことが、物語を深める原動力になっている。

僕としては、メインの何人かを囲む人物たちの設定がやや類型的である点、つまり、悪役があまりに単純に悪役になっている所に少し物足りなさを感じたのだが、しかし、悪役の人間的なところまで描こうとすると、これは前中後編の3部作になること必至で、観客は前編の途中で飽きて投げ出してしまう可能性が高い。

原作ではどんな風に描かれていたのかは知らないが、いずれにしても、観客に飽きさせないためには、テンポを重視して周辺人物をやや平べったく描くのも仕方がなかったのかな、とは思う。

逆に言うと、そういうことも含めて、この映画は非常に手際が良くてテンポが良い。冒頭のシーンから必要最小限の要素を上手に織り込んで、短時間で観客に今何が起こっていて、誰が何者なのかを的確に伝えている。

画作りも、あっと言わせるようなトリッキーなところはないが、しっかりとしたテクニックとセンスで、役者の表情も風景も、迫力のある画を見せてくれる。

惜しむらくは男の物語なので、画面がやたら男臭くてあまり華がないこと。まあ、しかし、この錚々たる超豪華キャストを見ると、あまり文句も言えなくなる。

佐藤浩市、綾野剛、榮倉奈々、夏川結衣、緒形直人、窪田正孝、坂口健太郎、筒井道隆、鶴田真由、赤井英和、菅田俊、金井勇太、小澤征悦、菅原大吉、柄本佑、椎名桔平、滝藤賢一、奥田瑛二、仲村トオル、吉岡秀隆、瑛太、永瀬正敏、三浦友和…。

こんなに登場人物が多くても、どうでも良い端役はなくて、それぞれが物語のどこかの部分で非常に重要なパーツを演ずることになる。そういう意味ではよくできた群像劇であり、また、それぞれの役者もそれぞれに素晴らしい。

僕はとりわけ榮倉奈々と瑛太が素晴らしいと思ったが、しかし、冗談でも何でもなく、誰が助演男優賞・女優賞を獲っても不思議はないくらいだ。

県警広報チームと記者クラブの関係、三上家の夫婦と娘の関係、旧64捜査班と被害者の父のその後、警察内部の複雑な思惑と力学──正義と欲が綯い交ぜになった入り組んだ人間関係と、我々の知らない警察と報道の内部事情が見事に描かれている。

(前後編を通じての)最後の終わり方が、全てを描き切るのではなく、ややぼかした印象になっているのを不満に思う観客もいるかと思うが、しかし、前述の通り、前半で悪役をやや固定的に描いた手前、最後まで断定的に描くことをしなかったのは正解だと僕は思った。

ともかく人間という複雑な存在を、複雑なままちゃんと全体像を捉えた良い作品になったと思う。年末には何か賞がもらえるかもしれない。

最後に、言うまでもないことだが、この映画は前編だけ観て後編は観ないということはありえない。それは前編だけでは全く作品の体を成さないということでもあるが、前編を見たら後編を見ずにはいられないだろうということでもある。

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