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Sunday, November 08, 2015

映画『グラスホッパー』

【11月8日特記】 映画『グラスホッパー』を観てきた。

伊坂幸太郎はそれほど読んでいるわけではないが割合好きな作家だ。いや、あるいは割合好きなのにあまり読んでいないと言うべきなのかもしれない(笑)

瀧本智行監督もそれほど観てはいない。大きな賞を受けたことも大ヒットを飛ばしたこともないが、コンスタントに作り続けられているということは、それなりの評価があるのだろう。この映画化も伊坂幸太郎が「瀧本監督なら」と言ったらしい。

僕はそういうわけで、それほど大きな期待は抱かずに観に行ったのだが、これが却々楽しかった。

最初のシーンの渋谷駅前交差点での大俯瞰を含む画作りが見事で、冒頭から引き込まれた。

車が歩行者をはねまくった後、死体を撮影してネットに上げる若者、そのスマホに止まる変色したトノサマバッタ、それが飛び立つと空一面凶暴化したバッタだらけになる。そしてタイトルバック。

──巧いなあ、綺麗なあと思ったら、なるほど、撮影は阪本善尚だった。

寺岡会長(石橋蓮司)が率いる巨悪の組織がある。その陰謀によって麻薬で錯乱した若者が車で渋谷交差点に突っ込むという事件があり、その巻き添えで主人公・鈴木(生田斗真)の婚約者・百合子(波瑠)が死ぬ。

残された鈴木はヤワな男である。生田斗真はこれまでマッチョな役もこなしてきたが、ここでは対照的に何もできない臆病な元教師の役柄であるところが良い。でも、そんな男が、真実の一端を知り、悪の組織に潜入しようとする。

そして、その組織に雇われた殺し屋が2人。ひとりはナイフを振り回して残忍に切り刻む通称「蝉」(山田涼介)、もうひとりは自分では一切手を汚さず、催眠術で自殺に追い込む通称「鯨」(浅野忠信)──この対照がまた面白い。

そして、終盤この2人の激闘シーンがあるのだが、今まで暴力なしてやってきた鯨が予想通り強いのなんのって──これがまた楽しい。

さらに、誰に雇われているのか分からない一匹狼の殺し屋・通称「押し屋」(吉岡秀隆)が出てくる。

このドラマはこんな風に非常に多彩に練り上げられて、適所に巧く配された多くのキャラクターによって複眼的に構成されている。これが一番飽きさせないポイントである。

他にも蝉のパートナー(交渉役)の岩西(村上淳)、鯨の前に現れる父親の幽霊(宇崎竜童)、鈴木の教え子だったと言う女(佐津川愛美)、鯨のエージェントの桃(山崎ハコ)等々、それぞれくっきりとキャラが立っている。

瀧本監督は、鈴木という役は色とりどりのメニューの中心にある白米である、みたいなことを言っているが、これは本当に言い得て妙である。だから飽きない。

その白ご飯を取り巻いて、結構脂っこいおかずが並んでいるのだが、細かいエピソードがスパイスとなって見事に効いている。蝉のシジミ好きや耳鳴り、鯨には幽霊が見えること、岩西の好きなロック・ミュージシャンのジャック・クリスピン等々。

ただし、最初の設定そのものに無理がある(恐らく伊坂幸太郎の筆力によって、原作ではそれをうまく隠しながら進んでいるのだろうけれど)ので、あちこちにリアリズムの綻びは感じずにいられない。

でも、人間が描けていると、進行の穴は割合塞いで行けるものである。

ただ、脚本はもう少し整理が必要だったかな。余韻もあったが、最後は少し長っ尻の印象も残った。

でも、娯楽作品としては上々の出来だと思う。面白かった。

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