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Thursday, October 15, 2015

漫画家志望

【10月15日特記】 映画『バクマン。』の鑑賞記事にも少しだけ書いたが、僕は子供のころ漫画家志望だった。

いや、小学校1、2年のころだから「漫画家志望」と言うほど確たるものではなく、「坊や、大きくなったら何になりたいの?」と訊かれたら「漫画家」と答えていた、という程度なのだが。

では、そんなに絵が巧かったのかと言うと、自分で言うのも何だが、これは巧かった。少なくともクラスで一二を争うほどには巧かった。

ただし、巧かったと言っても、テレビアニメの模写である(まあ、オリジナルのものを全く描かなかったわけでもないが)。一番得意だったのは『スーパージェッター』と『オバケのQ太郎』で、大勢のクラスメートが自分のノートに描いてほしいと言って僕のところに持ってきた。

僕はと言えば、「『スーパージェッター』はともかくとして、『オバケのQ太郎』くらいなら誰でも描けるだろうが」と不思議に思った。でも、ほとんどのクラスメートは僕ほど正確には描けなかった。オバQとドロンパの違いを把握できていなかったし、それを正確に筆に落とすこともできなかった。

そういうことが難なくできるということがある種の才能なんだろうか、と子供心にぼんやりと考えた記憶がある。

でも、結局僕は漫画家への道を進めなかった。その理由はひとつではないだろうが、一番大きかったのは、どうしたら漫画家になれるのかが分からなかったからである。

今はいいなあ、と思う。何でもインターネットで検索すれば、瞬時にしてそれなりの答えが出てくる。小学生はパソコンを持っていないかもしれないが、小学生がちょっと PC を借りて調べることはいくらだってできるだろう。

PC もインターネットもなかった当時の小学生には、まず調べ方が分からなかった。

なんとかかんとか、プロの漫画家は「ケント紙」という紙に「Gペン」というペンで描くらしいというところまでは調べがついたが、それをどこで買えばよいのかも分からない。

小学校の隣の文具店には恐らく置いていないし、それが小学生の小遣いで買えるような代物なのかどうかも分からない。そうこうするうちに「漫画家になるんだ」という希望も憧れもいつしかついえてしまった。

「そんなものやる気さえあれば、本気になって調べさえすれば、分からないことなんてないはずだ」というような、やたらと人を恫喝する言い方で、全てを根性論に押し込めようとする人もいるだろう。

しかし、僕に言わせると逆で、それはやる気がなかったから調べられなかったのではなく、もしちゃんと調べられていたら、恐らく次なるやる気に繋がっていた、ということなのである。

例えば『バクマン。』の主人公・真城最高のように、プロの漫画家の叔父さんがいたなら、僕は漫画家への道を進んでいたかもしれない。致命的に画力がなかった高木秋人が漫画家になれたのも、真城最高というパートナーに出会ったからである。

物事はひとつ進めば次に進むための足場ができる。僕にはそれができなかった。

そして、大学生のころには僕は小説家志望になっていた。このころには、やっぱりまだパソコンもインターネットもなかったが、それなりに物を調べる方法は身についていたので、名だたる文学賞に応募したりもしてみた。

それは落選であったが、一応やるべきことをやった結果だったので、諦めはついた。

逆にそこまでたどり着かずにうやむやになってしまった漫画家については、今でも時々「ああ、あの時から漫画家を目指してずっとやっていたらどうなっていただろう?」と遥かに思いを馳せることがある。

小説家についてはそんなことはない。あのまま小説家を目指していたらどうなっていただろう? 今ごろは野垂れ死にしてただろうな、と思うだけである(笑)

映画『バクマン。』はとてもよくできた作品だったけれど、あれを僕がものすごく面白く感じたのには、小さいころのそういう経験が影響しているのかもしれないと思う。

「思い」というのは不思議なものである。

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Comments

こんにちは。

私の高校の友人に山中俊治というのがいまして、こいつも学生時代は漫画家を目指していたようです。確かに高校では授業中に机に漫画ばかり描いてました。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B1%B1%E4%B8%AD%E4%BF%8A%E6%B2%BB

芸は身を助けるとは、こういったことなのですかね。

Posted by: 名古屋のM | Friday, October 16, 2015 at 18:51

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