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Sunday, October 11, 2015

映画『バクマン。』

【10月11日特記】 映画『バクマン。』を観てきた。

大根仁監督は映画デビュー以来ずっと評判が良い。僕が最初に観たのはテレビ・シリーズの『モテキ』で、この新しさには完全にぶっ飛んだ。当然映画版の『モテキ』も観た。今度はそのすごい感性にぶっ倒れた。

映画第2作の『恋の渦』は見逃してしまったのだが、僕の周囲では激賞する人続出で、てっきり賞を獲るのかと思ったら、その年のキネマ旬報では第16位で、逆に驚いたくらいだ。

今作はそれに続く劇場用映画第3弾である。今回も楽しい。

大根監督を語るときに恐らく必ず言われるのは、例えば CG を織り込んだりする、その実験的な映像手法だろう。だが、これは決して前衛とか実験とかいう類のものではない。これはひたすら大根監督の“遊び”なのである。だから楽しい。

今回も主人公である高校生漫画家コンビの真城最高(作画担当、佐藤健)と高木秋人(原作担当、神木隆之介)が、同じく高校生の天才漫画家・新妻エイジ(染谷将太)と対決するイメージ・シーンでふんだんに CG が使われている。

剣の代わりにペンやカッターを振り回すという発想も秀逸だが、そこに漫画のコマが絡みつき、はじけ飛び、刀の軌跡の代わりにスクリーン・トーンの切れっ端が飛んで行くなんて、よく考えたなあと思う。

彼らの脳内に溢れるドーパミンを想起させる圧巻のシーンである。

しかし、序盤、学校で高木が呼びかけて真城とコンビを組むに至る場面では、廊下を走って移動する彼らを長回しで捉えて一気に描いていたり、真城が亜豆美保(小松菜奈)に告った何日か後に学校ですれ違うシーンでは、階段を上がる亜豆を下にいる真城の目線で捉えた後、クレーンがゆっくり亜豆の高さに移動する美しい構図を見せてくれたりもする。

つまり何が言いたいかと言うと、この監督は決して CG などの飛び道具だけで画を構成して行く監督ではないのである。

入院した真城を亜豆が訪ねてくるシーンでは、カメラは細かく切り替えながら真城と亜豆を交互に1ショットに収めていくのだが、そのほとんどの構図に映り込んで揺れている白いレースのカーテンがとても印象的であった。

このカーテンが2人を隔てるもどかしい何かを如実に象徴しているのだ。

終わってからパンフを読むと、まさにそのような意図でカーテンを吊ったと美術担当の都築雄二が答えていたので、嬉しくなったのと同時にこの映画制作チームの素晴らしさを実感した。

それから、もうひとつ、大根作品の特徴は音楽である。この作品も本当に素晴らしい。担当したのはサカナクションである。

サカナクションの1曲がエンディングテーマに使われた、という単純な話ではなく、全編に流れる劇伴を全てサカナクションが作っている。それは BGM と言うよりむしろリフに近い。

この少しミニマルっぽい作りの、でも強烈にメリハリのある音が、クライマックスだけではなく、いろんなシーンで鳴っている。

僕は彼らのデビュー曲から注目していたが、こんなに大きなグループになるとは思っていなかった。しかし、この音作りを聴けばむべなるかな、である。

さて、あらすじを書こうかと思ったが、もう良いだろう。『少年ジャンプ』連載の青春熱血漫画家マンガが原作である。そして、それは『少年ジャンプ』の不朽のテーマである「友情、努力、勝利」を踏まえている。

僕は小学校時代は漫画家志望だったので、プロの漫画家の仕事の仕方が描かれているだけで胸躍るものがあった。

恋愛もあれば対決もある。彼らを見守る大人たちの思いもある。往年の名作漫画へのリスペクトもある。

ただ、僕は、この面白さのどこまでが原作の素晴らしさで、どこからが監督の手腕なのかを知らない。

でも、大根監督自身の手による、多くの登場人物については先にキャスティングしてからの当て書きになっている脚本が、めちゃくちゃナチュラルでリアルでホットなのは確かだ。

役者も良い。上に書いた4人が4人とも素晴らしい(とりわけ小松菜奈がリリカルでしびれる)。

そこに編集長のリリー・フランキーや担当編集者の山田孝之、漫画家仲間の桐谷健太、新井浩文、皆川猿時、真城の叔父で今は亡き売れっ子漫画家の宮藤官九郎ら、怒涛のキャストである。

その贅沢なコマを使った筋運びがものすごく力強い。劇中劇ならぬ劇中漫画も充実している。

そして、時々は監督自身が回しているカメラも、細かくカット割りして人物を追ってみたり、人物の周りをグルグル回ってみたり、漫画のコマと合成されていたり、とにかく工夫が尽きない。

最後のスタッフ・ロールがまた粋で、途中までこれがスタッフ・ロールだと気づかないくらいである。

いやあ、参った。とにかく面白い。舌を巻く面白さ。見終わってもまだずっと、何でこんなに面白いのかを考えているほどである。今回はきっと賞を獲るだろう。客は大入りだった。

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