『脳はどこまでコントロールできるか?』中野信子(書評)
【9月3日特記】 内容が面白そうだから、と言うよりも、『情熱大陸』で見た著者が、単にずば抜けて頭が良いだけではなく、とてもチャーミングな女性だったので、そういう興味から手にとった本だ。
難しい本ではない。いきなり脳の解剖図が出てきて、それぞれの部分の名前と働きについての説明で始まったりはしない。脳というものの不思議を、あくまで脳が作り出す現象面から説いてくれるので、素人にはとてもとっつきやすい。
たとえその現象の原因となっているのが聞いたこともない部位や物質の働きによるのであっても、詳しいメカニズムは分からないけれど、へえ、そうなのか、とストンと腑に落ちる。
序盤は「そうそう、そうなんだよな」と納得するような、我々の脳の不思議な動きが解説されている。そして、終盤になればなるほどどんどん面白くなる。それは終わり近くのページになるほど、最近の研究成果について書かれているからである。
脳の一部は20代までずっと建設途上にあるとか、日本人とアメリカ人の気質の違いは脳に関係する遺伝子のタイプの違いによるものであるとか、環境によって脳の中味が変わってくるとか、僕らが昔習ったこととは違う、あるいはそんなことはないだろうと勝手に信じていたことを覆すような事実が語られる。
だからどうだという結論は書かれていない。それは、ひとえに脳の研究が結論を書く段階には達していないということだろう。
だからこそ脳は面白いのかもしれない。
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