『図書館戦争 THE LAST MISSION』マスコミ試写会
【8月26日特記】 『図書館戦争 THE LAST MISSION』のマスコミ試写会に行ってきた。
映画が始まってすぐに思ったのは、一昨年のゴールデン・ウィークにこの映画の前作を見た時よりも、今の日本における言論の自由と表現の自由は、一層深刻な危機に瀕しているのではないか、ということである。
この映画に入って行けるかどうかは、結局そういう視点を持てるかどうかではないかと思う。前作の評にも書いたが、この映画は言論と表現の自由の危機に高らかに警鐘を鳴らし、強いエピソードを発している映画である。
(設定を全くご存じない方は、僕が前作を観て書いた文章を参照していただければ、初めのほうに簡単にまとめてある)
そして、前作に引き続き脚本を担当している野木亜紀子が今回も本当に見事な本を書いている。特に台詞が良い。
とりわけ、最後に近いシーンでの、図書隊隊員・手塚光(福士蒼汰)の兄・手塚慧(松坂桃李)に対する一言にはしびれた。これはもう「啖呵」と呼んで差し支えない小気味よさである。
そして、同じく図書隊隊員・笠原郁(榮倉奈々)の、上官・堂上篤(岡田准一)に対する思いの描き方──恋と尊敬と使命感の間を揺れる感じがよく描かれている。
図書隊の階級章のデザインとして原作で設定されていたカミツレを、具体的にストーリーに取り入れ、小道具として随所に配したのも大変巧いと思った。ラストのカットも非常に印象的だった。
(まあ、防弾チョッキを着ているという想定なのだろうけれど、それにしても)何発弾が当たっても主な登場人物は一人も死なないという不自然さだけが、この本の欠陥である(笑)
今回の図書隊の敵はメディア良化隊だけではなく、元・図書隊のエリート隊員であり、怪しげな団体を組織して図書隊の壊滅を画策する手塚慧である。
松坂桃李が演じているこの男がかなりヤバい。こういう論理展開で物事を進める輩は現に我々の周りにもおり、そして、彼の言うような理屈に籠絡されてしまう人たちだってたくさんいる。
松坂はそういうヤバさを見事に体現していた。
その手塚慧が手塚光の兄であるという設定も面白い(これも原作通りのようだが)。前作では光を演じた福士蒼汰がまだブレイク寸前という所に留まっていたが、今回は既に主演級のスターになっていて、文字通り輝いている。
そして、何よりもこの企画において目を瞠らせる存在は榮倉奈々である。勇気、恥じらい、正義感、怒り、恋心──ころころ変わる表情の中に、そういう全てを織り込んで、僕らの心を揺さぶってくれた。
最後のシーンの写真とキャプションがまた泣けるではないか。
その榮倉奈々をそれだけ魅力的に映るのは、言うまでもなく上官である岡田准一の安定した演技に負うところも大きい。今回は少しアクション部分が少なかった、と言うか、派手でなかったが、その分台詞に彩りがあったように思う。
前作と同じく、すり鉢状の図書館の画がとても綺麗だ。建物の形状を活かした戦闘シーンも飽きさせない。特に盾を持った良化隊の列が、ざっざっと階段を降りてくる辺りは、まるで昔のインベーダーゲームみたいで(例えが古すぎるかw)、怖さもある一方で、非常に面白い構図だった。
僕は今回のこの作品にかなりジーンと来てしまった。とても良い映画だったと思う。10月10日の公開である。
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