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Thursday, July 23, 2015

『寂しさの力』中森明夫(書評)

【7月23日特記】 アイドル評論家が少し毛色の変わった本を書いたな、と思って手に取った。帯には「成功はさみしさから生まれる」とか「生きることは(中略)さみしさを肯定することです」などとある。

僕はこれを読んで、「ははあ、この人は『寂しさ』を『さびしさ』ではなく『さみしさ』と読んでいるのか」と、変なことに気が行く。「もうひとつ言えば、僕は『寂しさ』ではなく『淋しさ』という漢字を使うなあ」などとも思う。人は違うのである。

さて、そんなことはどうでも良いとして、これはその『寂しさ』をパワーと認定した書物である。

その見解に対して僕は、「ああ、なるほど、そういうことか! 目から鱗が落ちた」などと感動したわけでもなく、「そうそう、そうなんだよ。僕と同じことを考えている人がいたぞ!」と激しく同意したわけでもない。どちらかと言えば、「そりゃ、ま、そうでしょうよ」という軽い感じである。

ただ、その底流にあるのは、僕がものを考えるときに基本的な指針にしている「逆説的にものを捉える」という姿勢がある。だから、この本は非常にすんなりと、まるで水を飲むように僕の体内に取り込まれた。

しかし、初めに結論を述べて、まるでその説を補強・立証するために次々と実例を挙げているかのように書き進んでいるのは、実はそれほど面白い構成ではない。これではまるで、西洋人の有能なビジネスマンによる良くできたプレゼンテーションのようなものだ。

ただ、そこにあげられる例には、数多くのアイドルやスーパースターたちの素顔など、さすがに筆者のキャリアなくしては語れないエピソードが多く、その点は非常に面白い。

そして、終章にたどり着いた時には、「あ、この人はこういうまとめ方をするのか」という小さな驚きがあった。文章には書き手の内面が現れる。僕なら絶対こういう締め方にはしないが、この現れ方は悪くない。意外な一面かも知れないが、これが中森明夫の締め方だったのだ。

ここには人の弱さに対する優しい眼差しがある。そして、弱さから生まれるパワーから暖かい希望が流れ出している。

すぐに読めてしまう、悪くない本である。

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