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Saturday, July 04, 2015

映画『コングレス未来学会議』

【7月4日特記】 映画『コングレス未来学会議』を観てきたのだが、このタイトルはちょっと変だ。だって、congress は(大きな)会議という意味なのだから。

ちなみに原題は THE CONGRESS で、原作の邦題が『泰平ヨンの未来学会議』である。

だから『コングレス』がメイン・タイトルで『未来学会議』がサブだと言うのならまだ解らないでもないが、スペースも空いてないし、どう見てもこれは一続きのタイトルのつもりらしい。

原作はポーランドのSF作家スタニスワフ・レム(Google日本語入力で「すたにす」まで打ったらフル・ネームが出てくるほどの著名な作家であるらしい)の小説。

ただし、監督のアリ・フォルマンはこの SF小説をかなり改変し、また、新しい人物や設定、物語を書き加えていると言う。で、パンフを読んだ感じでは、この映画の面白さはまさにそんな風に書き加えた部分にあるようだ。

だから、この映画化は成功だと言える。

往年のスター女優ロビン・ライト(ロビン・ライト本人が演じている)は40歳を過ぎてオファーが減ってきた。それを見透かして、映画会社ミラマウント・スタジオの CEOジェフ・グリーン(ダニー・ヒューストン)がロビンにある提案をする。

それはロビンの肉体の形と動き、表情、演技などをまるごとスキャンして CGキャラを作り、以降はその CGに全てを演じさせるという企画。「キアヌ・リーブスはすでにこの契約にサインした」と言う。

これによってロビンは今後一切撮影所に出向く必要はない。不本意な企画に出演する必要もないし、気に染まない共演者や監督と一緒に働く必要もない。会社側としても気難しい女優に文句を言われたりドタキャンされたりするリスクがない。

ただし、ロビンは今後如何なる場所でも演技することは禁じられる。そして、ジェフは、ロビンがこの契約書にサインしなければ今後一切契約することはないとまで言って脅す。

ロビンは当然その場で拒絶するが、2人の子供を育てなければならず、しかも下の男の子はやがて聴力と視力を失う難病にかかっている。

少女時代からずっとロビンのマネージャを務めてきて、ロビンの気持ちも解るし、生活上の問題点も承知しているアル(ハーヴェイ・カイテル)が取りなして、ロビンに契約を決意させる。

ロビンは「今すぐスキャンしてほしい。明日までその気でいられるかどうか判らないから」と言い出して、すぐにスキャンすることになるが、いざ作業を開始すると、まるで機械のように指示されることにうまく対応できない。

それを見事に解決したのもアルだ。この辺りまでの展開は、台詞の良さと、ロビン・ライトとハーヴェイ・カイテルの名演もあって、非常に面白く、目が離せない。

で、そこから一気に時代が飛ぶ。CG のロビンは SF映画のトップスターとして君臨し続けている。彼女は最初に33~34歳に設定されたまま年を取らない。

そこへ年を取ったロビン本人が帰ってくる。ミラマウント社の未来学会議に出席するためである。そこからがどうやら原作の小説に割合忠実な世界らしい。

そして、この時代になると、女優に代わって CGが演技するどころか、一般人が薬を飲んで、なりたいキャラになりきることができる(外見も含めて)ようになっている。

そのなりたいキャラになりきれるということを表現するために、「ここからはアニメ専用地域です」という台詞とともに、後半は全編アニメになるのである(最後にもう一度実写の場面に戻るが)。このアイデアは秀逸である。

ただ、残念なことに、ここで描かれる世界自体は仰天すべきものなのだが、描き方にあまり仕掛けがないものだから、少し眠くなる。これは僕だけではなく、一緒に行った妻も同じことを言っていた。

監督自身が今敏監督の影響を認めているように、『パプリカ』に似通った絵柄である。『パプリカ』のほうがもう少し派手でグロテスクでユーモラスではあったが、それに大きく引けを取るような出来ではない。

動きも色も変幻自在で、マイケル・ジャクソンやセックス・シーンまで出てくるところが素晴らしい。ディランという人物が出てきて『フォーエバー・ヤング』が流れる辺りもセンスの良い演出だ。

ただ、全体に印象は深いのだが、前半の分かりやすさと比べると、後半がちょっと難しかったかな。その分面白さもそこそこという感じになってしまったが、でも、この監督は天才だな、とは思った。

観るだけの価値のある作品だと思う。

ところで、Science Fiction のことをアメリカでは SF ではなく(いや、SF という略し方もあるにはあるんだろうけど)Sci-Fi と略すということを今日はじめて知った。役者の口からはサイファイという音が聞こえているのに、日本語字幕は「SF」となっていてややこしかった(笑)

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