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Tuesday, June 02, 2015

推敲のススメ

【6月2日特記】 僕は他人から時々表現がきついと言われることがあるが、これでもネット上にあまりネガティブなことは書かないように気をつけているつもりである。

どんなにひどいと思った映画や本も、なんとか良い点を見つけて、決してボロカスな書きっぷりにならないように、一生懸命気を配っているつもりである。

でも、毎年この季節(5月末)に、これだけはひどいなと思うものがある。今まではグッと我慢して書いていないけど、毎年「これ、本当に放っておいて良いのだろうか?」とさえ思うものがある。

いや、人にはそれぞれの感じ方があって、何人も他人の感じ方を尊重すべきである、ということは理解している。でも、みんなが(あるいは識者が)良いと選んだものが悉く良いと思えない時、僕はどうするべきなのだろう?

たまには「僕はそれを良いとは思わない」という記事を書いても良いのではないかと思う。それを書くことでより良いものが生まれる可能性だってきっとあると思うから。

だから、今回は思い切って書いてみる。読んで気分を害する方がおられるかもしれないので、最初から謝っておく──偉そうなこと言ってゴメンナサイ、と。

それはどこかの生保会社がやっているサラリーマン川柳コンテストである。みんな本気であれが良いと思っているのだろうか? どうも不思議で仕方がない。

一つひとつ例にとって説明すれば分かりやすいのだが、さすがにそれでは個人攻撃のような様相になってしまう。応募しているのはアマチュアの方だけに、それはあまり良いこととは思えない。だから、ここでは具体的には書かない。

ただ、それぞれの上位入賞作品に共通して言えることがある。それはアイデア一辺倒の勝負になっていないだろうか?──ということである。

入賞作品をひとつずつ読んでいると、僕には「ここはこう変えたほうが良いのに」と思えるところが何箇所もある。上位入賞作なのに「表現を変えればもっと良くなる」作品が多いところが解せないのである。

例えば、

この句は最初に結論を述べて手の内を明かしているから面白くない。五七五の最初の五と最後の五を入れ替えたら、最後まで読んだ時に驚きが得られる表現になるのに…

とか、

ここはこの単語ではなく、ほぼ同じ意味でもこちらの単語を持ってきたほうが、語り手の属性がくっきりと見えてきて、句全体にも面白みが広がるのに…

とか、

この「ああ」は字数を整えるためだけに挿入されており、川柳の中であまり巧く機能しているとは言えない。これを外して(これより2文字長い単語で)もっとニュアンスとインパクトのある表現に変えられないか?

とか、

この句はたった1字字余りであるだけで(あるいは、音の組み合わせが悪いために)、全体にリズムがのっぺりしてノリが悪い。笑いを取る極意は書いた文章でも話した言葉でも“スピード感”と“間”である。音や響きをもっと大事にして作るべきではないか?

とか、いろんなことを考えてしまう。

そう、それらは着眼点は良いのに表現が拙く、推敲すればもっともっと面白い作品になるのに、その途中で応募されてしまった未完の五七五という感じがするのである。

言葉にまつわるコンテストって、本来は着眼よりも表現のセンスを競うものなのではないのだろうか? 最初のひらめきではなく、推敲の結果を評価すべきではないのか?

主催者がそこのところをどう考えているのかが僕には理解できないのである。

「偉そうに、そんなことを言うなら、自分で応募して1位を獲ってみろや」とお叱りをいただくかもしれないが、残念ながら、僕が大切にしていることを、このコンテストの審査員たちはしっかり見てくれそうな気がしないのである。

(自分が勤めている会社の番組で恐縮だが)川柳ではなく俳句の世界では、タレントたちの俳句を夏井いつき先生が推敲してみせる企画が当たっている。彼女が一語を入れ替えただけで、見事に表現が締まってくるところに毎回感心してしまう。

言葉の面白さって、本当はそういうところにあると思うのだが、違うだろうか?

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