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Saturday, June 06, 2015

映画『新宿スワン』

【6月6日特記】 映画『新宿スワン』を観てきた。

園子温監督作品を映画館で観るのもこれで9本目だが、昔の作品と最近の作品で著しく異なるのは、昔の園子温特有のチープな感じがなくなったことである。

これはひとえに映画に思う存分お金をかけられるようになったということだろう。

いかにも安っぽいセットで大勢の安物の役者が演じていた(もちろん部分的には良い役者も出ていたのだが)のが今では嘘みたいで、今回も歌舞伎町での大々的なロケや本物と見紛うセットと言い、勢揃いした役者のランクの高さと言い、いやあ目出たいと思った。

で、お話はと言えば、これはまるでマンガである(ま、原作が漫画だから仕方ないのだがw)

僕は歌舞伎町やスカウトのことに何がしかの造詣があるわけではないが、しかし、まあ、あの業界に多少ヤクザが絡んでいるにしても、スカウト自身は組員ではないだろう? いくらなんでもスカウト同士の血で血を洗う抗争とは恐れいった(笑)。

それから、カーテン1枚しか仕切りのない風俗店の部屋というは、いくらなんでも客が居心地悪くて来ないんじゃないの? おまけに、そのカーテンの向こうで店長が女の子殴り倒してるとなると(笑)。

こういうのを見ると、恐らく『闇金ウシジマくん』の描写のほうが事実に近いのではないかなと思う。

実際、風俗店が直接女の子の借金を肩代わりするというようなリスクの高いことはしないだろう。そこはやはりカウカウファイナンスみたいなヤミ金が肩代わりして女の子を売り飛ばすほうが餅は餅屋なのではないかな。

あと、ストーリーの上では栄子(真野恵里菜)の苦悩が何なのかさっぱり分からない、などなど、設定と進行に穴は多く、「うーむ」と心のなかでひとりごちてはいたのであるが、しかしこの映画、観ていると面白くて仕方がないのである(笑)。

何と言っても主人公の白鳥龍彦役の綾野剛である。

僕は綾野剛の出演作を映画館で観るのはこれが16本目(端役で出ていたという『愛のむきだし』まで含めたら17本目)だが、今までこんなにはっちゃけた綾野剛を観たことがない。

ウルトラ・ハイ・テンションでわざと上滑り気味な演技をしているのだが、この突き抜けた脳天気さがもう絶品である(笑)。

僕は綾野剛にこんなコメディの才能があったのかと驚いた。いや、この作品がコメディかと言えば全然そんなことはない。極めてシリアスなドラマである。しかし、だからこそ、この弾けたおかしさが沁みてくるのである。

今までは結構暗めの、若い割には渋めの役が多かった綾野である。

例えて言えば、彼は実写版の『ルパン三世』では十三代目石川五エ門役に起用されるような役者だった。あるいは、上記の『闇金ウシジマくん』では山田孝之演ずる丑嶋のほうがコミカルで、綾野の戌亥は丑嶋に比べて遥かに堅気っぽい情報屋だった。

面白いことに、それがこの『新宿スワン』では逆転している。主人公・白鳥の敵役で、野心に溢れ自信に満ちているが、実はコンプレックスの塊でもある南秀吉(山田孝之)は何も面白いことは言わない。それに対して、白鳥は驚くほど軽佻浮薄である。

他の人物も見事にデフォルメして活き活きと描かれている。

白鳥を拾って育てる先輩スカウトの真虎(伊勢谷友介)、その真虎と並ぶ幹部の関(深水元基、=『クローズZERO』のリンダマン)、同じく幹部の時政(村上淳)、彼らのライバル会社の幹部・葉山(金子ノブアキ)、そこの無能な社長・松方(安田顕)、クラブのママ・涼子(山田優)、暴力団の会長・天野(吉田鋼太郎)…。

それぞれに個性的で素晴らしい演技だった。特に涼子ママの男前さにはしびれた。

そして、風俗嬢アゲハを演じた沢尻エリカである。純真さと猥雑さの両面を上手に描いていた。29歳になってもこんなに可愛い女優はいないだろう。

ランジェリー姿のアゲハと白鳥の逃避行のシーンのなんと美しいことか。ここでの白鳥の軽薄な感じが、嬉しくもあり悲しくもある。歌舞伎町のけばけばしさがそのまま都市の美しさに昇華している。

脚本は放送作家の鈴木おさむと水島力也である。水島力也というのはプロデューサーの山本又一朗の変名だが、どうもこの人が書くと台詞が固く大仰になる気がする。

そんな中で、綾野剛がアドリブで言ったという、山田孝之との殴り合いのシーンの果ての台詞がとても素敵だった。

園子温らしく暴力シーンは強烈で、昔ほどスプラッタではなくなったが、見ていて体が強張るほど痛いシーンもあるので、そういうのが苦手な人は気をつけたほうが良い(笑)。

ま、なんのかんの言いながら、僕は大いに楽しんだ。後味も良かった。大いに満足した。

そして、何よりも嬉しかったのは、先日東京に出張した時に、急にどうしてもトンカツ茶漬けが食べたくなって、わざわざ歌舞伎町まで行ったのに、店はおろかビルごと失くなっていてショックを受けた「すずや」の在りし日の姿が見られたことであった(笑)

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