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Saturday, June 27, 2015

映画『ラブ&ピース』

【6月27日特記】 映画『ラブ&ピース』を観てきた。

僕はクリエイタになりたくてなれなかった人間だが、若い頃からずっと作りたいと憧れていたのは、全部がすんなりと頭に入るような作品ではなく、「なんだか解らないけど、なんだかすごい!」という作品だった。

この映画がまさにそういう作品だった。あまり予備知識なく観に行ったのだが、予期せぬファンタジーだったので驚いた。園子温監督のファンタジーとは!

うだつの上がらないサラリーマン・鈴木良一(長谷川博己)が、デパートの屋上で買ったミドリガメの助けを借りて、昔の夢だったロック・スターになる話である。

と聞くと、現代版『浦島太郎』かと思うだろうが、実はこの亀は大怪獣ガメラでもある。

それに加えて、アマチュア時代の小中和哉監督ばりにぬいぐるみたちが動いて喋る(こちらはコマ撮りではなくパペット・マニュピレーションのようだが)。

そして、地下の下水道に棲み、彼ら(おもちゃや動物たち)を優しく見守る謎の老人(西田敏行)がいる。

だが、この2人のメインの登場人物は画面の中で全然クロスしないのである。不思議な話である。

パンフを読んで、これは無名時代の園子温が25年前に書いた企画だと知った。もちろん、時代を移して2020年の東京オリンピックなども入れ込んではあるが、ほとんどが当時書いた脚本をそのまま生かしているとのことである。

映画の最初のほうで、トイレの排水口がこんなオープンな地下下水道には繋がっていないだろう?と思ったが、その辺り確かに台本に若さが出ている。

今回、園子温はそれをお構いなく、それがパワーだと言わんばかりに映画化したように見える。

落ちこぼれサラリーマン時代の鈴木良一はあまりにもデフォルメされた過剰演出、過剰演技だ。そこに、同じようにうだつの上がらないOL・寺島裕子(麻生久美子)との捗らない恋物語が絡む。

彼らのぎこちない演技もまた、初期の園子温を思い出させる。だが、この映画では一滴の血も流れない。暴力さえもほとんどない。それどころか、ぬいぐるみとおもちゃのロボットと人形とカメが麗しい友情で助けあったりする。

でも、監督は「この映画はまるごと園子温だ」と言っている。

確かにこの色使いは園子温である。でも、今までなかったような園子温であるのも事実である。

最初のほうで小さいミドリガメが人生ゲームの上を歩くシーンが、最後のほうで大怪獣となったミドリガメ・ピカドンが町並みを抜けて日本スタジアムに顔を出すシーンに被ってくるところが、あっと声を上げるほど見事だった。

そして、主人公が歌う『ラブ&ピース』という楽曲が素晴らしい。これなら確かに大ヒットするだろうという、ポップでキャッチーで、インパクトも強い良曲である。驚いたことに、この曲を含めて映画の中で流れる3曲が園子温の作詞作曲なのだ。

で、クライマックスで唐突に流れだすRCサクセションの『スローバラード』。恐らく僕は何百回も聴いているが、それでも未だに色褪せない名曲だ。この名曲がフルコーラス流れる中で、ラストのシーンがある。

タワー・オブ・パワーのホーン・セクションが聴けば聴くほどメリハリがある。この曲の闇雲な迫力に、僕らはグルグル巻きにされてしまう。そして、映画はあえてぶった切るように終わることで、それは深い余韻となる。それはかすかな希望の光となる。

何百回も聴いていて今回初めて気づいたのだが、忌野清志郎が曲の終わり際に小さな声で「カメ」と言っているのに驚く。この符合は何だ!と思ったのだが、この点は園子温もパンフの中で語っていて、本当は「雨」と言っているのだそうだ。

長谷川博己の歌は巧くなかった。本当ならこれではロック・スターになれないだろう。だが、この映画の意味はそんなところにはない。

ラブ&ピースなのである。その歌詞と同様に、この映画は忘れられないものとなった。

うまく言えない。が、うまく言えないもので人の心を動かす作品を本当にすごいと思う。

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