『アナと雪の女王』
【5月10日特記】 今さらながらではあるが、昨夜、WOWOW から録画しておいた『アナと雪の女王』を観た。ま、あれだけ評判になっただけに、一応観ておきたいという気持ちが強かったので。
妻は観ている最中から「つまらない」を連発し、見終わった後も随分不満げだった。
ま、ディズニーということもあり、筋は子供だましである。だから、僕は最初からストーリー展開には全く期待していなかった。
ただ、やっぱり 3DCG の出来栄えには舌を巻いた。技術的な先進性もあるが、この表現力である。
今のアニメは、どのシーンも完全にカメラで撮った映像になっている。
単にアニメーターが絵を描くのではなく、キャラクターがあり背景があり、画面の外側のどこかに光源が想定され、画面の手前のどこかにカメラ位置が想定されていて、そのカメラに収めた映像という形のアウトプットになっているのだ。
だから、雪の宮殿は天井から見下ろすのか、階段の下から仰ぐのか、崖からの転落は同じ高さから横に見るのか、落ちた地点から見下ろすのか、そして、人物に向かってカメラは寄るのか、あるいは引くのか──そういう構図ありきの画なのである。
その構図の決め方のセンスもあるし、そして、髪が風になびく、哀しみに顔が一瞬歪む、氷の上でちょっとだけ足を滑らす、腰に力が入って筋肉が微妙に動く──などの必ずしもストーリー上ではそれほど大切ではないところの描き方に却って上手さが出る。
衣服のドレープ感なども含めて、これが CG なのかと思うとなおさら信じがたい。
ただ、やはり子供相手ということもあるのか、展開が速いのは良いのだが、そのスピードが一様でリズムに変化がない。だから、大人は飽きるのである。
ストーリーの結末も今までのディズニー映画にはなかった展開と評判になったが、それも別にそれがどうした?という感じである。
あれほどヒットした主題歌についても、僕は元からそんなに評価していない。
でも、この映画を貶そうとして書いているのではない。
上述の通りのアニメとしての卓抜した表現力と、ブロードウェイから来たミュージカルさながらの構成(画だけでなく曲も)、そして、昔のお伽話のはずが、人物の思考パタンが完全に現代風であるということ──そういう全てが如何にもアメリカン・アートだなあと深い感銘を受けた。
これを吹き替えで見るなんてとんでもなく惜しいことだと思う。だって、(今さら珍しいことではないかもしれないが)台詞とアニメの口の動きがせっかく一致しているんだから、それをぶち壊すなんて勿体なくて仕方がない。
動きはいつものディズニーらしいデフォルメされたものだが、それでも生身の人間が歌って踊っているような印象をちゃんと与えてくれる。
結論として、大人が観て面白い作品ではないが、やはりディズニー恐るべし、というのが僕の感想である。
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