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Friday, April 10, 2015

『ビリギャル』マスコミ試写会

【4月10日特記】 映画『ビリギャル』のマスコミ試写会に行ってきた。5/1(金)公開。監督は TBS の土井裕泰。

副題(あるいは正式タイトル)の『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』がストーリーの全てである。

だから、この映画はストーリーでは引っ張れない。観客は「果たして合格するんだろうか」とハラハラすることはない。「合格するったって、実は一浪で通るんじゃないか」と勘繰ることもない。最後はめでたく現役合格することが分かっている。

となると、人物をどれだけ描けるか、どれだけ飽きさせずにエピソードを繋いで行けるか、筋を転がす土台となる設定にどれだけ説得力を持たせられるか、といったことがポイントになる。制作者はそういうところで力量を問われることになる。

そういう視点で観ると、脚本の橋本裕志が非常にうまくまとめあげているのが判る。

この映画は上記と同名の長いタイトルの原作本に基づいている。よく売れたらしい。書いたのは学習塾の塾長だ。この映画ではその先生を伊藤淳史が演じている。

僕は普段から、実話に基づいているということに何の価値も見出さないし、そういう売り方をすることには嫌悪感を覚えるほうなのだが、特にこういう形で映画化するのであれば、実話かどうかには全く意味がなく、問題はそれがドラマになっているかどうかである。

橋本裕志はとても上手にドラマにしたと思う。

いくら実話だと言われても、ただ、勉強のテクニックだけを描いたのでは説得力は出てこない。そもそも学年ビリになったギャルがどうして勉強する気になったかから描く必要がある。

現実の世界で一番の問題は、長らくビリでいると決してやる気が出なくなってしまうということなのだから。

映画はその部分もきっちり描いている。坪田先生(伊藤淳史)が森玲司(野村周平)の母親に「やればできる」と言わないでくれと言うシーンが、例えばそのうちのひとつだ。

坪田はともかく褒める。良い所を見つけて褒める。そして、生徒たちが理解しやすく共感を得やすいように、彼らの好きなゲームやアニメになぞらえて語る。子どもたちをクズ呼ばわりする大人たちを許さない。

そういう無神経な大人たちの代表として、主人公・工藤さやか(有村架純)の父(田中哲司)と担任(安田顕)を配している。原作通りなのかどうかは知らないが、この設定が非常にうまく機能している。

そして、さやかの小学生時代から描いている。これも却々功を奏している。何故さやかがビリになったのか、金髪のギャルになったのか、変な話ではあるのだがなんとなく納得させられてしまう。

そして、終始彼女をかばう母(吉田羊)のなんとチャーミングなことか。彼女は自分の娘が他人と違っていることをちっとも咎めず、逆にそれを誇るべき個性としてちゃんと認めてくれている。

塾と家庭が主な舞台で絵変わりの少ない設定なのだが、最初のほうの夕陽を受けて自転車で走るシーンとか、河原の土手で周平とさやかが話すシーンとか、さやかが友だちとお風呂で話すシーンとか、綺麗な絵もポツポツある。

試写会場で配られた宣材を読んで感心したのは、原作本の著者が「この話は受験の話ではなく、家族の話です」と言っているところである。そうか、無味乾燥な原作をそういう映画に仕立てあげたのではなく、多分原作からして家族の話だったのである。

なんだか観ているうちにうるうるしてしまった。自分の大学受験時代も甦ってきた。

有村架純が演じているのでほわっと見えてしまうが、この娘はかなり芯の強い娘である。最初は有村架純の可愛さに目を奪われているが、いつしかその一途さに心打たれていた。

「やればできる」のであれば人生はたやすい。だが、実際はそうではない。やっても全然ダメなのかもしれないのに、それでも続けるからこそ、努力は尊いのである。

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