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Sunday, April 05, 2015

映画『ソロモンの偽証 後篇・裁判』

【4月5日特記】 先行上映で『ソロモンの偽証 後篇・裁判』を観てきた。

僕は大体公開初日か2日目に映画を観ることが多いのだが、この映画の前篇については観るのが随分遅くなった。しかし、後篇をこうやって先行で観られたので、おかげで1週間しか空いておらず、次から次へと忘れてしまう僕としては大変助かった。

で、前篇は事件の発端から描いて、そこから派生する更なる事件や騒動もあり、動きのある話だったが、後篇は一変してほとんど法廷劇の様相を呈する(もっとも、法廷と言ってもここでは中学校の体育館だが)。

僕はてっきり、真実を知りたいとの思いから学校での裁判を実現した中学生たちの手によって、驚愕の真相が飛び出すような結末になるのだと、勝手に想像していた。だが、そういう話ではなかった。

いや、確かに新事実は明らかになるが、仰天するほどの事実ではない。

ま、『名探偵コナン』じゃあるまいし、中学生の模擬裁判で、警察も知り得なかった秘密が暴かれるというような設定にしてしまうと、どこかでリアリティを損なうことになってしまうだろう。

だから、それはそれで良いのだが、しかし、僕も含めて、原作を読まずに映画館に来た観客の多くは、そういう結末を期待していたのではないだろうか?

もしそうなら、「なぁんだ」という感想にも繋がりかねない。そして、そう思われてしまうと、この映画は過小評価されることになる。でも、この映画の見せ場はそこではないのである。

まず、目に留まるのは、描かれる大人たちである。

樹理(石井杏奈)の母・未来を演じた永作博美が、今まであまりなかった役柄で、やっぱりこの人は巧いなあと唸りたくなるような演技である。

「親バカ」という言葉は時に愛情を込めて使われるが、そうではなく本当に悪い意味での「親バカ」の極致。でも、あまりに短絡的とは言え、ここまでなりふり構わない親バカぶりには、きっと感銘を受ける親もいるのだろうと思う。

そして、死んだ松子(富田望生)の父親を演じた塚地武雅。この人は『間宮兄弟』の時から巧いと思ったが、今回も秀逸である。どっかの助演男優賞が獲れてもおかしくない。娘を奪われた苦悩と屈折、でも、そこから滲みだす生来の人柄の良さ──そんなものを見事に演じていた。

そう言えば『間宮兄弟』で塚地の兄役だったのが佐々木蔵之介だ。この映画では夏川結衣と夫婦役で、主人公藤野涼子(役名と同じ「藤野涼子」でデビュー)の両親を演じている。

樹理と対照的にバランスの取れた家庭ではあるが、やはり親子の行き違いみたいなものはある。そして、父の職業は刑事である。そのことを活かして娘が検事を務める裁判を応援する。妻役の夏川結衣の「クビにならない程度に無理してね」という台詞が良い(笑って言ってはいない。そこには親としてどうして良いか分からない苦悩と、夫への信頼感が共存している)。

前篇の評でも褒めたけれど、後篇も台詞は上手に組み立てられている。

大怪我をした森内先生(黒木華)が運ばれた病院に生徒たちが息を切らせて走ってくる。ベンチで待ち構えていた北尾先生(松重豊)が「病院で走るな」と一括する。

──こういうのはストーリーの進行には不必要な台詞である。でも、そういう細部にこそリアリティの生命線があることを真辺克彦はよく知っている。

今回は法廷中心なので、そんなに目立つカメラワークはないが、涼子が神原(板垣瑞生)に「あなたは何者なの?」と迫るシーンではずっと涼子の背後から神原を映し、涼子は後頭部しか映らない。こういう演出も面白いと思った。

終わってみれば、それほど凄惨な話ではなく、人が死んだという重さこそあれ、やっぱり中学生らしさのある話だった。そのピュアさにところどころで落涙してしまった。久しぶりに泣いた映画だ。

監督の指示で低い声を出したという藤野涼子。その演出は成功である。とても存在感があり、また映画オリジナルで加えられた設定によって苦悩が与えられ、そこから這い上がってくる強さが描かれた。

藤野涼子は将来スターになるかどうかは分からないが、名女優になりそうな気はする。

いい映画だった。ただ、最後の台詞だけは意図が読めなかったが。

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