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Saturday, April 18, 2015

映画『バードマン』

【4月18日特記】 映画『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』を観てきた。今年(今年度ではなく)初めて見る外国映画である。

アレハンドロ・G・イニャリトゥ監督、って聞いたことあるけど誰だっけ?──と思って調べたら、ああ、『バベル』の監督か。

この映画は「賛否両論に分かれるだろう」とか「日本人には受けない」といった記述をいくつか目にしたのだが、かと言って日本人が酷評している記事にもお目にかかっていない。

僕自身としては、「こんなに面白い映画を果たして貶す人がいるのか!?」と思うくらいに面白かった。

まず驚いたのがカメラ。映画が始まってすぐに気がついたが、カット変わりがないのである。

1台のカメラが誰かと誰かのシーンを撮っている。そのうちひとりが部屋を出て行く。カメラがその人物を追っかける。次の場所で他の役者と絡むシーンを撮る。また移動する人物をカメラが追う。そして、途中ではぐれて別の場所で別の人物のシーンを撮る。

──と言った具合。これがめちゃくちゃ面白い。

で、画は繋がっているのだが時間の流れは同じではなく、次の場所に移った時には突然何時間か後であったり翌日であったりする。けれども画面は依然としてワンカットで切れ目がない。

ひょっとして映画の終わりまでこのスタイルで行くのかと思ったら、終盤にインサートが何カットか入って途絶えた。でも、その後もまた元のスタイルに戻り、最後まで行った。これはもう全編ワンカットと言っても差し支えないくらいである。

もちろん、役者とカメラが(あるいは照明や録音も)そこまで過酷なことができるわけはなく、つまりは動かないものだけを撮っている時にカメラは一旦止めているはずで、単に観客に編集点が見えないだけなのだが、それにしてもひとつひとつのシーンはべらぼうに長い上に移動も激しいはずだ。

そして、この流れがこの映画をものすごく魅力的なものに仕上げている。

こういう手法は、しかし、単に僕が知らないだけで、過去何人かの監督がやっているのだそうだ。だが、ここまでストーリーのイメージと一体化したものがあったのだろうか?

僕はほとんど予備知識なしで観て解りにくいところもなく非常に面白かったし、むしろ何も知らないほうが面白いのではないかという気もするが、一応いつもどおりちょっとだけ筋を書いておく。

主人公のリーガン(マイケル・キートン)は往年のヒーロー映画『バードマン』主演のスターだったが、その後はヒット作もなく、今はブロードウェイで自らが脚本・演出を手がけ出演もする初舞台のリハーサル中である。

出し物はレイモンド・カーヴァーの『愛について語るときに我々の語ること』である。

その彼に、バードマンがしょっちゅう楽屋に現れて語りかける。そんなつまらない仕事はやめてバードマンに戻ろう、と。

そして、みんなは知らないのことなのだが、実は彼には超能力がある。念力で物を動かしたり、バードマンのように本当に空を飛べたりするのである。

──この辺りの設定が絶妙である。これがこの後の展開の大きなポイントとなってくる。

リーガンには別れた妻と娘サム(エマ・ストーン)がいる。サムは薬物中毒のリハビリから実社会に復帰し、今はリーガンのマネージャーだ。

そして、リーガンの芝居にはリーガンの愛人ローラ(アンドレア・ライズブロー)と、この芝居が遅咲きのブロードウェイ・デビューとなったレズリー(ナオミ・ワッツ)が出ている。

主演男優が怪我で降板し、レズリーが交際中のマイク(エドワード・ノートン)を連れてくる。このマイクが、確かに名優ではあるが、人格的にはとんでもない奴で…。

画も面白いし、人物設定も良い、台詞も素晴らしいが、筋運びがとても面白い。僕の悪い癖で、いくつかポイントとなるところで先を読みきってしまったりもしたのだが、先が判っていても面白さは減じない。

パンフレットを開いたら「アカデミー賞主要4部門を勝ち取った 映画史をひっくり返すファンタジーが誕生!」と書いてあって、椅子から転げ落ちるほど驚いた。

げっ、きみはこの映画を「ファンタジー」という言葉で括るのか!?

まあ、それも良いだろう。ことほどさように多様な解釈を許し、さまざまな感興を呼び起こす作品なのだ。それほど豊かな作品なのである。

語り過ぎないところが効いている。観客は映画を観て自分の頭で想像し、自分の頭で考える。観客に考えさせる映画は良い映画である。そして、非常にポジティブな終わり方をしているところが僕はとても素敵だと思った。

いろんなシーンでいろんな解釈が成り立つだろう。僕は惜しくてそのうちのいくつかの解釈を書く気にならない。ありとあらゆる解釈や感慨やイメージが頭の中でぐるぐると渦巻いている。この渦巻を渦巻きのままにしておきたい。

ものすごく気に入った。

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