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Sunday, March 29, 2015

映画『ソロモンの偽証 前篇・事件』

【3月29日特記】 映画『ソロモンの偽証 前篇・事件』を観てきた。

原作の小説は読んでいない。実は宮部みゆきは長らく読んでいない。

読めばきっとそこそこ面白いだろうとはいつも思うのである。しかし、人間よりもむしろ社会を描こうとする作家で、その分、人間の描き方が薄くなって類型的になってしまう恨みがある。

そこが僕にとっては、人物がたくさん出てくる割には物足りなくて、いつも食指が伸びないのである。

パンフを読む限り、その原作を成島出監督と脚本の真辺克彦は大変うまくアレンジしているようだ。もともとが単行本で3冊に亘る大著であることもあって、そのまま削るだけでは映画にならないという事情ももちろんあったようだが。

金原由佳が原作と比較して書いている記事や、成島監督のインタビューなどで読む限り、まず多くの登場人物(主に中学生)に新たな設定上の試練を与えている。これで人物に肉が付いた。そして、演出でもかなり追い込んだはずだ。

3次オーディションの後、2ヶ月かけて演技のワークショップを開催したり、真辺が稽古場に PC を持ち込んで、役者のキャラに合わせて台詞を書き変えたり──そういうもろもろの努力によって、自ら動き出しそうな人物造形に至ったのだろうと思う。

成島出という監督は、僕の印象としてはオーソドックスな人で、僕は一般にエキセントリックなほうが好きなので、そんなにワクワク感はないのだが、正面から取り組んだ感じの良い映画になったと思う。

冒頭は、成人して教師になって母校に転勤してきた涼子(尾野真千子)が中学校にやってくるシーンだ。何故か通用門から入ってくる。

23年前のクリスマスの朝に、涼子(藤野涼子)がクラスメートの柏木(望月歩)の死体を発見した場所だ。

大人になった涼子が、満開の桜越しの俯瞰で捉えられ、それから、その木越しに校舎の屋上を見るところを、今度はものすごく深い角度で下から収め、その時の回想シーンではもう一度ものすごい高いところから真下の雪の中の死体を捉え、そこから一気に引いて行くという面白いカメラワークがあった。

この事件を警察は飛び降り自殺と断定して捜査を終えた。しかし、複数のところに「自殺ではなく同級生の大出(清水尋也)らが殺したの見た」という「告発状」が届く。

再び警察が動き出し、佐々木警部補(田畑智子)が生徒のカウンセリングに名を借りた捜査を始める。その結果、どうやらその告発状は俊次にイジメられていた樹理(石井杏奈)と、その友だちの松子(富田望生)が書いたようだと判る。

しかし、校長(小日向文世)は新たなイジメが発生することを惧れ、それ以上の捜査を拒んでしまう。

冒頭以降はそんなに奇抜な画はなく、カメラは人物を中心に追って行くのだが、車に轢かれる直前の松子や夫に殴られた後の美奈絵(市川実和子)などの顔のアップが結構怖い。

真実をうやむやにしたまま事なかれ主義で進もうとする大人たちに反感を持った涼子は、生きていた時に柏木に咎められた際の心の傷もあり、自分たちで裁判をして真実を明らかにしようとする。

当然大人たち、特に教師たちによる反対や妨害がある。でも、唯一他校から裁判に参加してきた神原(板垣瑞生)や北尾先生(松重豊)の協力もあって、裁判は実現に向けて動き出す。

──前篇はここで終わりである。何も起こっていないうちに終わった感があり、ミステリとしては非常に物足りないだろう。後篇に引っ張る要素もそれほどなく、死んだ柏木と、小学校で柏木と同級生だったという神原の2人が抱えていそうな謎が興味を惹く程度である。

ただ、そういう視点ではなく、世代対立、あるいは世代比較を背景とした青春ドラマとして見ると、これは大変面白い。

教師たち(黒木華、木下ほうか、安藤玉恵)のダメな大人ぶり、外でイジメに走る大出の悲惨な家庭環境、それに比べて極めて理解のある涼子や松子の親たち(佐々木蔵之介と夏川結衣、塚地武雅と池谷のぶえ)との対比。

特に、感情に流されそうになりながら、娘に醜態を晒す前に冷静さを取り戻し、娘の背中を押してやる涼子の母(夏川結衣)の描き方が良い。

僕自身が経験をしてきた、潔癖で思い込みの強い思春期特有の息苦しさと痛みが自分の肉体にも甦ってくるような気さえする。清々しいけれど痛々しい。

そんな中で、一部の大人たちにも支えられながら、自分の頭で考えて結論を出し、まっしぐらに実行に移して行く中学生たちを見ていて、胸も熱くなるし、勇気も湧いてくる。

本当はこんな中途半端なところで映画をぶった切って、1ヶ月半後に後篇を観に来いというのは失礼なのだけれど、なんか観ていると心がピュアになってくるような部分もあって、素直に後篇を待てそうである。

当然のことながら、エンドロールの後に予告編があるので、最後まで座って観よう。

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