『ヌイグルマーZ』
【3月1日特記】 WOWOW から録画しておいた『ヌイグルマーZ』を観た。公開の時に見逃して悔しい思いをした作品だ。
とは言うものの、筋も台詞も極めてチープ! ま、ある程度予想はしてたけど(笑)
代表作である『ロボゲイシャ』などを観れば判るように、井口昇監督はもっとシリアスでリアルに作ることもできる人である。しかし、これは子供向けのアクション・ヒーロー物のパロディだから仕方がないのである。
しかも、平成の SFX 全開のヒーローではなく、下手すると吊るしてるワイヤーが見えかねない昭和のヒーローのパロディなのだから。
そして、そんなことよりも、そもそも井口監督はこういうチープなテイストの笑いが好きで好きでたまらないのである。だから、今回はずっとこんな感じ。
そんなチャチなものは我慢できないと言う人には1分たりとも楽しめない映画なのだろうな(笑)
でも、ゴスロリ少女がぬいぐるみと合体してスーパーヒーローに変身するというそもそもの発想が独創的であるし、結構そそられる組合せだと思う。そして、その役に打ってつけの中川翔子をブッキングしたこともナイスである。
さらに、秀逸なアイデアがてんこ盛りで、結構笑えるのである。
ゾンビを野に放つなんて残酷なことは普通の人間には気後れがしてできないから、そのために無邪気な赤ん坊に変身させられた赤ん坊怪人がドアを開けるボタンを押すのだが、彼にボタンを押させるためにおっぱい見せて挑発するのである(笑)
かつて、『死霊の盆踊り』なんてタイトルの映画があったが、この映画では死霊の阿波踊りである。しかも、それが高円寺の阿波踊り大会の時期に合せて出てくるというのがサイコーではないか(笑)
これが徳島の阿波踊り会場や、東京のディスコに現れたのではここまでのインパクトは出ないのである。あくまで高円寺の阿波踊りだから中途半端に(失礼!)笑えるのである。
ただ一点だけ非常に残念だったのは、ヌイグルマーZに変身した後は、そのヒーローを演じているのはしょこたんではなく武田梨奈だったということである。マスクから見えている顔の部分で一目瞭然である。
もちろん、なぜ別の役でも出ている武田梨奈と同じ顔になってしまったかという説明はあるのだが、しかし、それは筋の必然性によるのではなく、ひとえに監督が武田梨奈を使いたかったというわがままによるものであるのは疑いようがない。
ひとつには、ヌイグルマーには本格的なアクションをさせたかったからだろう。
園子温監督の『TOKYO TRIBE』で証明済みだが、しょこたんはアクションのできない女優ではない。しかし、武田梨奈のようなキレのあるハイキックは無理だ。あれをやらせたかったのだろう。
それからもうひとつは、極めて単純な話で、監督が昔から可愛がってきた武田梨奈をただただ使いたかったという側面も否めないだろう。
だから、非常に面倒くさい設定をして、ゴスロリの中川翔子が変身したらピンクのマスクの武田梨奈になるという形にした。
でも、それなら、いっそのこと顔の露出しないマスクにしてスタントを使うか、あるいは、今や CG やら 特撮やら万能の時代なのだから、特殊造形の西村映像に頼んでしょこたんのアクションを合成するかすれば良かったのではないか?
そして、しょこたんを補佐するサブ・ヒーロー(ヒロイン?)役で武田梨奈をキャストすれば良かった。
ただし、しょこたんの敵役に武田梨奈というのはいけない。それはどう戦ってもしょこたんが勝てそうな気がしないから。しょこたんの敵は今回のように猫ひろしぐらいがちょうど良い(笑)
ま、そんな恨みは残ったものの、いやはやいつもの井口ワールドで、ファンとしたらそれなりに楽しめた。
例によって西村映像の西村喜廣が、少年時代の猫ひろしを虐げたアル中の(この言葉を堂々と使っているところも笑える)父親役で出演しているし、言わばファミリーの一員である(しかし、今やスターになってしまった)斎藤工が歯に青海苔つけて出てくるし、常連である亜紗美もちゃんと脇に名を連ねている。
で、子供向けのようでありながら、4人の女性が並んでおっぱい露出するなど、AV出身の井口監督の真骨頂は忘れていない(ただし、今回は乳首の先から光線が出る設定にして CG を被せたので、さながらぼかしと同じ効果になっているのがお笑いである)。
最後のほうでは素の中川翔子のアクション・シーンもあり、得意のヌンチャクも披露している。
いつもながらの井口作品なのだが、うーん、今回ばかりはもうちょっとシリアスに作ったほうが却って笑えたかもしれない。ま、これでも良いんだけど(笑)
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