NHK放送90年ドラマ『紅白が生まれた日』
【3月21日特記】 NHK放送90年ドラマ『紅白が生まれた日』を観た。NHKらしい、良いドラマだった。
松山ケンイチはともかくとして、本田翼、星野源、miwa ら、恐らく NHK のメインの視聴者層にはまだ認知されていないであろうと思われる(笑)フレッシュなキャスティングにしたのが良かった。
ひとことで言って『紅白歌合戦』誕生秘話ドラマなのだが、まずもって「へえ、そうだったのか」という情報の新奇さがあった。
(以下、ネタバレがあります。事前に知っていたらドラマが全く楽しめなくなるというほどのものではないとは思いますが、これから観ようという方は、読むかどうかよく考えた上で先に進んで下さい)
例えば、当時の生放送は(時間的に)押すのが当たり前で、タイムテーブル通りに進行しておらず、それを GHQ に咎められていたということ。
当時の放送局員は「巻き」や「キュー」などの“ハンド・サイン”を使っておらず、それを GHQ から教わったということ。
『紅白歌合戦』というタイトルが GHQ から NG を食らい、初回は『紅白音楽試合』というタイトルだったこと。
出演予定だったディック・ミネのドタキャンで、急遽紅組白組キャプテンの水の江滝子と古川ロッパが歌ったということ。
新藤ディレクターのとっさの判断(というより、心の昂ぶり、とでも言ったほうが良いかもしれない)で、せっかく審査員の投票を集計しながら、「勝敗はラジオの前の皆さんに委ねる」という結末にしたこと。
等々、エピソードを追うだけでも楽しい。
そして、みんなが心に傷を負いながら必死で生きていこうとしていた姿、この後の高度成長期の元気な日本に直結した健気な日本人たちの姿がよく描かれている。
熱血漢の新藤達也(松山ケンイチ)、如何にも新時代の女性という感じの竹下光江(本田翼)、日本人とアメリカ人の間で引き裂かれる GHQ の日系人通訳・ジョージ馬淵(星野源)ら、皆が皆なんとも清冽な人物像だった。
75分という短い作品(民放なら CM込みで 1.5H枠ということになるが)なので、ややあっけない感じはあるが、読後感の良いドラマに仕上がっていた。
脚本は映画監督でもある尾崎将也。見逃した人はNHKオンデマンドで見る価値ありだと思う。
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