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Saturday, February 21, 2015

映画『でーれーガールズ』

【2月21日特記】 映画『でーれーガールズ』を観てきた。

最初に観た作品、それも監督デビュー作かそれに近い時期の作品が、ずっと頭から離れないことがある。年間ベストテンに選ばれるほどの作品だとまでは思わないのだが、不思議に心の奥底に沈み込むように残る作品。

僕にとってそれは、例えば飯塚健監督の『放郷物語』であり、安藤桃子(当時はモモ子)監督の『カケラ』であり、そしてこの大九明子監督の『恋するマドリ』だった。

その後の大九監督作品では『モンスター』を観ている。これは結構キワモノっぽい映画であった。今回のような映画が多分大九監督が一番得意とする題材なのではないかなと思う。

原作は原田マハ。この人の小説が映画化されたものとしては『ランウェイ☆ビート』がある。僕は良い映画であったと思うのだが、評判にはならなかった。

この『でーれーガールズ』もそうなのだが、あまり劇的な事件は起こらない。描かれているのはありふれた青春の、しかし、ありふれているからこそ普遍的な青春の痛みである。

ここで登場人物たちが悩んだり苦しんだりしているようなことは、大人の眼から見れば「つまらないこと」と集約できるかもしれない。

現に今の僕らは日常生活でこの程度の行き違いや悲しみに遭遇しても、簡単にそれをなかったことのようにして、明日を迎え、明日を暮らしている。そんな風にして、僕らが置き去りにしてきた青春時代の敏感な感性がここでは見事に描かれている。

女子高生同士の友情、というか、友だちづきあいというのは僕にはよく分からない。でも、ああ、こういうのあるだろうな、と思う。男子高校生にはなかったことかもしれないが、でも、青春期にはみんなが共有した類の思いではある。

とはいえ、セーラー服をめぐるいろんなエピソードなんて、とても男性には書けない話である。その辺りのディーテールの確かさが映画のリアリティを支えている。

そして、『モンスター』でもそうだったのだが、女の人にしか多分撮れない画がここにはある。例えば、ホテルに着いた佐々岡鮎子(白羽ゆり)がベットにうつ伏せに寝そべって膝を曲げて足を浮かせているところを足の側から撮っている。

ああ、このアングルは男には無理だなあと思った。

学校というのは映画には持って来いのロケ場所であり、そこでは高さと奥行きを活かしたいろんな画が撮れる。川とか橋とかも同じ条件である。中村夏葉のカメラはそれを巧みに切り取って本当に綺麗な画を撮っている。

調べてみたら『三年身籠る』のカメラマンである。あの時の自分の映画評を読み返してみたら「奥行きの深い、重層構造の構図」「短めのカットで繋いで行く手法」などと書いていて、当時も印象に残ったようだが、今回も同様の趣向である。

さて、ストーリーに移ろう。

主人公は佐々岡鮎子(少女時代が優希美青、40代になった現在が白羽ゆり)と荻原武美(少女時代が足立梨花、現在が安蘭けい)。

東京から引っ越してきて岡山の名門女子校に入学した鮎子だが、周りは附属中学から上がってきた子ばかりで上手く馴染めない。おまけに鮎子の標準語がおかしいと笑われる。馴染もうとして岡山弁を使ってみるが、その用法が間違っているとまた笑われる。

それが岡山弁「でーれー」である。標準語だと多分「どえらい」、名古屋弁なら多分「どえりゃあ」になるのだろう。

その鮎子をかばってくれたのが、名門女子校では少し浮いた不良っぽい雰囲気を持ち、その性格もまさに姉御肌の武美だった。2人は友だちになる。

鮎子は武美の性格に惹かれ、今まで誰にも見せたことがなかった、趣味で描いている漫画を武美に見せる。鮎子らしきヒロインとカッコイイ大学生の彼ヒデホ君の恋物語。

武美はその漫画を実話だと信じ、鮎子に寄せる好意以上にヒデホ君に恋心を抱く。そして、鮎子にいつかヒデホ君に会わせてほしいとまで言い出す。

そこから先は書かない。高校生活で僕らが経験してきたような小さな、でも、繊細な肌に染みるような、いろんな出来事がある。ホームページの表現を借りると「不器用だった鮎子と意地っ張りだった武美」の間ですれ違いが起こる。

武美が突然転校し、ふたりはわだかまりを抱えたまま別れてしまう。

そして、30年後、売れっ子漫画家になった鮎子が母校の創立記念事業で講演をすることになり、同窓生たちが集まり、鮎子と武美も再会する。

それほど大きな事件を起こさずに観客を感動させるというのは非常に難しいことで、僕は観ている途中から、この映画は一体どうやってケリをつけるのだろう、と心配になった。

でも、これは原作によるところが大きいのかもしれないが、転がし方が非常に巧い。心のひだひだの部分に液体が流れこむようにして、高校時代の思い悩みを洗い出して行く。最後はうるうる来てしまった。

ああ、でも、こういう世界は男には絶対描けないなあと重ねて思ったのだが、エンドロールを見ると、なんと脚本を担当したのは『大停電の夜に』などを監督した源孝志である。これはあっぱれではないか。

唯一残念なのは少女時代と大人になってからの鮎子、そして武美が、いずれも似ていないということである。

まあ、これは仕方がない。だって、これはホリプロ制作の映画で、2組のダブルキャストが4人ともホリプロのタレントなのだから(笑) そうそう、脚本の源孝志もホリプロの人である(僕は彼がテレビの仕事をしていた頃の名刺を持っている)。

しかし、その映画になんでメ~テレが主幹事となって出資しているのかが分からない。だって、舞台は名古屋ではなく岡山である。しかも、今回はメ~テレが配給までやっている。

そういうこともあって、非常にマイナーな上映規模である。もっと多くの館で上映して多くの人に観てもらいたい映画である。

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