『ブルージャスミン』
【2月11日特記】 WOWOW から録画しておいた『ブルージャスミン』を観た。ウディ・アレンの監督作品を観るのは随分久しぶりである。
アカデミー脚本賞にノミネートされたほか、数えきれないくらいの賞を獲った映画だから、僕が今さら語ることもないのだが、まあ、驚くほど衒いのない、堂々たる会話劇であった。
で、話がどうしようもなく哀しい。
主人公のジャスミン(ケイト・ブランシェット)がセレブから転落する話(と言うか、転落した後の話、回想込みの)なのだが、実は転落する前には里子に出されたところから這い上がってきた過去があり、それも含めて見ると、結局のところどの男にくっつくかということに尽きるのである。
そこが一番哀しい。そして、ジャスミンだけじゃなくて、妹のジンジャー(サリー・ホーキンス)の人生もまた、男次第ではないか!
日本よりずっと進んでいるはずの、女性の自立は一体どこへ行ったのだろう?
イケてる男とイケてない男の対照がまた極端で、ジンジャーの前夫も、現在の彼も、そしてパーティで知り合った男も、みんな悲しいくらいパッとしない。転落後のジャスミンが就職した歯科医もまたしかり。
それに対して、実は詐欺師であったりするのだが、それでもジャスミンを「甘やかして」(spoil という甘い単語を使っていた)くれた前夫も、ジャスミンに再び甘い夢を見させてくれた外交官も、悲しいくらい勝者の香りがするのである。
アメリカという自由主義社会が如何に階級社会なのかを容赦ないまでに描いている。残酷な映画である。
この映画でケイト・ブランシェットはアカデミー主演女優賞を獲ったのだそうな。そりゃ獲るわな、と納得してしまう演技だった。
昔から思うのだが、僕はウディ・アレンという俳優は大好きではあるが、ウディ・アレンの監督作では、彼が出演しないほうが出来が良いと思う。
彼が出ないほうが概ね過酷な味わいになってしまうのであるが、彼のジョークに笑う暇がない分だけ、僕らは映画の蟻地獄から抜けられなくなってしまうような気がする。
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