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Saturday, November 08, 2014

映画『クローバー』

【11月8日特記】 映画『クローバー』を観てきた。出かける直前に酷評を読んだのだが、いや、僕には意外に面白かった。

ホテルに勤めるドSの上司・柘植暁(大倉忠義)と前向きなOL・鈴木沙耶(武井咲)の恋物語である。

他のところにも書いたが、僕はこのドSとかドMとか言う表現は好きでない、と言うか、しっくり来ないのである。マルキ・ド・サドやマゾッホに対して失礼だと思う。

現にこの柘植も人を苛むことで歓びを感じる人間ではなく、弱みを見せたくないという思いと、怖がりである裏返しから、単にそういう言動に出てしまうだけのことである。

表現はぶっきらぼうでも誠意があれば思いは通じると勘違いしてるから、こういう表現型になってしまう。これは僕自身も思い当たるフシがある。

一方、沙耶のほうは、真面目で前向きで頑張り屋に見えるが、実はいざというところで先手を打って積極的な行動に出ることができないタイプで、それが証拠に仕事の上では間際になってのミスが多い。

そんな風に実はある意味消極的だった沙耶が、突然「僕とつきあえ」と言うような“ドS”の上司に接することによって、自分から求めないと幸せの四つ葉のクローバーは手に入らないのだと学んで行く成長物語──と僕は読み解いた。

座席は結構埋まっていて、そのほとんど(僕を除くほぼ全員と言っても過言ではない)が若い女性で、つまり、みんな大倉忠義のファンということなんだろう。

しかし、見始めてすぐに、これは彼女たちが観に来た甲斐のない作品ではないかと思えてきた。

これは明らかに沙耶を主語に語った物語であり、沙耶が主人公である。おまけに柘植はまるで機械みたいに冷たく厳しいという、非常にデフォルメされたキャラクターなので、あまり役者としての見せ場がない。

これでファンの娘たちは満足するのだろうか?と他人事ながら心配になったのだが、途中で分かったのである。

大倉ファンの女の子たちは、自分を沙耶に投影して、沙耶になってスクリーンの中で大倉忠義との恋愛を疑似体験しているのである。

柘植にツンデレのデレの芝居をさせない代わりに、沙耶の濡れた髪をドライヤーで乾かしてやる場面をあしらってあった。それを追体験しているファンの女の子たちからすれば悶絶死しそうな設定だろう。とても綺麗で微笑ましいシーンだった。

そういう場面設定も含めて、何よりも、プラトニックなファンタジーにせず、きっちり性愛を描いているところが、この手の映画としては偉いなあと思った。

沙耶の中学時代の交際相手で今は人気俳優になっている樋野ハルキ(永山絢斗)というキャラクターが登場するのだが、彼とは性的な関係までは進まない。そこの違いがちゃんと描かれていたような気がする。

ハルキは間が悪いのである。肝心な時にいなくて、後からやってきて優しくする。女の子たちは多分“ドS”であっても、内心は揺らいでいても、結局最後に頼りになる柘植に惹かれるのではないだろうか。

冒頭の BGM が Someday My Prince Will Come という当てのない希望の歌で、終盤クライマックスでの BGM が When You Wish Upon A Star という、自分で幸せを掴み取ろうとする歌になっているところが却々巧いと思った。

アイドルやアイドルっぽい女優だとついつい見くびってしまうのだが、実際見てみると魅力的でびっくりすることが時々ある。僕にとっての武井咲はそんな存在だった。僕は『愛と誠』で断然見なおして、それ以来彼女のファンである。

表情も良いのだが、何と言っても声が良い。これは天性のもので、他の女優には真似のできない点である。

画作りも綺麗な映画だったが、やっぱりこの映画の主役は武井咲で、洋服のコーデや髪型が非常に多彩で可愛く、魅力全開であった。

そして、共演者では、ホテルの専務を演じた上地雄輔の演技が光っていた。この人は本当に巧いねえ。

まあ、軽い映画ではあったが、途中結構笑えたし、読後感も良く、楽しい映画だった。

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