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Sunday, November 09, 2014

映画『小野寺の弟 小野寺の姉』

【11月9日特記】 映画『小野寺の弟 小野寺の姉』を観てきた。

どうも抵抗があったのだが、割合良い評判も聞くし、監督の名前に記憶がなかったので調べてみたら『TIGER & BUNNY』の2本の映画の脚本やストーリー・ディレクターを務めているということが判ったので、それを信頼して観に行くことにした。

何に抵抗があったかと言えば、それは片桐はいりを恋愛映画の主演に据えるセンスである。

俳優の美男美女率は一般社会のそれよりも遥かに高い。それは当たり前のことで、誰もが写実的なものより綺麗なものを観たいのである。

とは言え、芝居によってはブスの役柄が必要なケースもある。そういう場合は、正統的な美人女優は避けて、ちょっと天然のかわいい系かファニー・フェイス系の女優に、眼鏡を掛けさせたり鬘をつけたり突拍子もないメイクをしたりして凌ぐのが一般的である。

中には『モンスター』のように、高岡早紀に特殊メイクを施して、痛々しいほどの醜女に仕立てあげたケースもないではないが、一般的には、映画やテレビ・ドラマに出て来るブスは、ブスというほどブスではないか、ストーリーの進行にあまり影響しない脇役であるかのどちらかである。

それを考えると、どうして片桐はいりで恋愛を撮るのだろう?と訝しく思う。

もちろん、恋は顔でするものではない。あるいは、顔でするものとは限らない。しかし、いずれにしても、片桐はいりのあの顔と恋愛するためには、何かくっきりとしたきっかけが必要である。

それほどの顔なのである。それほどの飛び道具なのである。

片桐はいりが悪い女優だとは思わない。面白いし、哀愁もたっぷり感じさせることができる。

ただ、香辛料に使ってこそ料理が引き立つ女優なのであり、彼女を主演に恋愛を語ってしまうと、今回の映画のネタではないが、それは丸のままの唐辛子をてんこ盛りにした料理みたいなものになってしまうのではないだろうか。

彼女が演じた小野寺より子の子供時代が出て来る。無理もないのだが、この子役と片桐はいりが似ても似つかない。この先どう転んでもこんな顔にはなるはずがない。それほど強烈な顔なのである。

そして、その姉に感謝し、姉を大切にする弟・小野寺進に向井理が扮しているのだが、僕のように姉を持つ身からすると(みんながみんなそうではないのかもしれないが)、それはちょっとおぞましい設定である。

そのより子が、勤務先の眼鏡店に出入りするコンタクトレンズの営業マン・浅野(及川光博)に恋をする。進は姉のために別れた元カノ・好美(麻生久美子)が忘れられないが、やがて絵本作家の岡野薫(山本美月)に恋をする。

まず、姉のほうの恋だが、こういうコメディ・タッチの映画では、彼氏いない歴40年のより子にも漸く彼氏ができました、メデタシメデタシ、にするか、やっぱり今回も彼女の思い込みで、振られちゃいました、チャンチャン、で終わるかしかないのだが、どっちの方向に進むにしても、違和感のない展開にはならない。

うまく行ったなら行ったで、なんでまた浅野がより子に惚れたのか説得力に欠けるし、振られたのなら振られたで、なんで浅野はあんなにより子にどぎまぎして優しかったのか説明がつかない。ここはもう少し研究の余地があったのではないかな。

それと、弟の進のほうの恋愛だが、これは過去の恋愛も現在の恋愛も展開に違和感はないのだが、姉のために尻込みしたり何かを諦めたりするというのが、僕にはさっぱり共感が得られない。

僕は家族のために恋を断念するというのが分からない。家族に恨まれ絶縁したっていいじゃないかと思ってしまう。

さて、そういうことを全部取っ払って語ると、これは却々巧い映画である。

唐辛子も、暖簾も、遊園地も、シャワーも、最初の頃に蒔いた種を全部きれいに刈り取ってファイナルに持って行っている。スタッフロールの後の静止画も非常に巧い。

僕でなければ多分大いに笑って泣ける映画なのだろう。僕は何箇所かで笑ったけど、到底泣けそうもなかった。むしろ腹が立ったくらいだ。

僕がこの映画を気に入らないのは、映画の出来を云々しているのではない。ひとえに恋愛観の違いである。

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