映画『進撃の巨人 【前編】──紅蓮の弓矢──』
【11月27日特記】 映画『進撃の巨人 【前編】──紅蓮の弓矢──』を観てきた。とても有名な作品なので解説の必要はないだろう。これはテレビ版アニメの総集編である。
もう漫画誌を買わなくなって20年くらいになるので、僕はテレビ化されるまでこの原作を知らなかった。テレビ・アニメも観ていなかった。
ところが、グロテスクな超大型巨人の顔を象った宣伝用のレプリカ(というか巨大な顔像)を目の当たりにして、「なんじゃこりゃ!」と思ったのである。
そのタイトルからして、僕はてっきり巨人がヒーローなのだと思っていたのだ。ヒーローの巨人が悪を蹴散らして進撃するのだと。ところが、とんでもない、それは気色の悪い人喰い巨人だった。
こういう逆説めいたタイトルは面白い。で、ネット上でコミックスの第1巻だけ読んだのだが、後は映画で見ようと思って読まずに今日まで来たわけである。
人間たちは巨人の進撃を食い止めるために、高さ50mの城壁を作って、その中で100年間平和に暮らしていた。ところがある日、その壁をぶっ壊して、素っ裸の人喰い巨人たちがぞろぞろ入ってきて、建物は叩き潰す、人は喰いちぎる…。
ジャスト・ワン・アイデアの作品だが、そのアイデアが面白い。そして、エレンという一途な少年と、クールで心身ともにともかく強いミカサという少女、身体能力は少し劣る内省的な少年アルミンというメインの人物設定がうまい。
特にミカサという魅力溢れるキャラの力でドラマをぐいぐい引っ張って行く。総集編なので、このミカサがどういう訳で命がけでエレンを守ろうとするのかという、少年期のエピソードが省かれているのは少し残念ではある。
そして、これはアニメを観ていなかった僕には想像がつかなったのだが、多くの人が映画という大画面の威力を指摘している。なるほど、ここ(劇場)では巨人が本当に巨人なのである。デカいから怖いという単純な図式。
そして、音もデカい、と言うか、うるさい、と言うか、すごい、と言うか。ともかく劇場の音響設備のお陰で迫力はさらに増すのである。
画自体はあまり細かく描き込んだ絵ではない。動きもそれほど細かくはなく、静止画を使って省略したようなところも多い。
しかし、影だけは見事に丁寧に描いてある。これがこの作画のミソだと思う。
人物の顔に正面から全体的に光があたっている絵は少なく、どこかに影がかぶっている。顔が動くと影の形も変わる。ほとんど顔全体に影がかかっている絵もあるのだが、まさにこの陰影が作品のムードを作り出していると言える。
そして、圧倒的な構図の面白さがある。
巨人を相手に戦うために兵士たちは必然的に屋根を走り、宙を翔ける。巨人の大きな顔が迫り、それを躱して人がのけぞる。俯瞰があって、ズームイン/ズームアウトがあって、速くて大きなパンがあり、そのスピーディな転換に酔いそうになる。
で、怖いのは巨人たちの顔である。不気味に笑っていて、頭が悪そうなのだが、それが却って怖い。いくら人間のほうが頭が良くても、あんなにデカイと到底歯が立たないのである。
で、ジャスト・ワン・アイデアのアニメだと見くびっていたら、あらら遂にエレンが巨人に食われて死んじゃったか(でも、主人公がこんなに早く死ぬか)?という辺りから予想もしなかった怒涛の新展開があり、面白いのなんの、怖いのなんの。
これはもう【後編】も観るしかないのである。いやあ、本当に堪能した、と言うより、これはトラウマになる。今夜悪夢を見るかもしれない(笑)
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