不可解な銀狐
【9月9日特記】 唐突だが、銀狐というのが分からない。
僕は自ら「日本ポップス史の研究家」を以て任じているが、1969年の大ヒット曲に『夜の銀狐』というムード歌謡がある。
いちいちここでリンクを張ったりしないが、年配の方であれば間違いなく聞いたことのある歌だと思う。試しに検索してみてほしい。
その「銀狐」が何だか分からない。歌詞を読んでも分からない。多分、その歌で歌われている、愛する女のことをそう称しているのだろうが、何故銀狐なのかが分からない。銀狐の襟巻きでもしてたんだろうか?
もっと分からないのが、歌詞に突然出て来るソーロ・グリース・デ・ラ・ノーチェだった。スペイン語である。
あの当時の流行歌には『コモエスタ赤坂』みたいにスペイン語があしらわれているものが少なくない。なんでスペイン語なのか分からないのだが、多分流行りだったのだろう。
で、デ・ラ・ノーチェは解る。往年のビッグ・バンド「有馬徹とノーチェ・クバーナ」のノーチェである。英語で言えば night である。
昔はよく「ノー・チェック」に掛けて、「ノーチェックバーナでやってしもた」(あるいは、「ノーチェックバーナでやってモーターボート」)などとおどけたものだが、ノー・チェック・バーナではなく、ノーチェ・クバーナ、「キューバの夜」である。
で、ソーロ・グリースが分からないので、ググってみると、いやはや同じことで頭を悩ましている人がいるもので、一発で回答に行き当たった。
ソーロ・グリース・デ・ラ・ノーチェ は zorro gris de la noche で、またしても英語にすると、gris は gray、zorro は fox で、gray fox of the night となる。
なんのこたぁない、「夜の灰色狐」ではないか。ほぼそのままである。
しかし、銀色と灰色はちょっと違うぞ、と思って調べてみると、銀狐という動物は「黒色の毛に白い差し毛が混生するため銀色に見える」とある。うむ、黒い毛と白い毛なら灰色であろう。
そこまでは分かった。でも、なんで銀狐なんだろう? なんで銀狐を愛していて、なんで銀狐のドレスが泣いているのだろう?
良きにつけ悪しきにつけ、昔の歌詞は相当深い。
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