『スタンリーのお弁当箱』
【8月17日特記】 WOWOW から録画しておいたインド映画『スタンリーのお弁当箱』を観た。公開の時から妻が観たいと言っていた作品で、公開期間が短かったので見逃した映画である。もう、めちゃくちゃに面白かった。
インド映画と言っても、登場人物が突然歌い踊りだすような作品ではない。ただし、歌付きの BGM が始終鳴ってはいる。歌なしの BGM も入って、こちらはインドっぽくなく随分洗練されたポップス風である。
話はほとんどタイトル通りの弁当を巡る話。
ある小学校が舞台。キリスト教の男子校である。スタンリーはお茶目で、作り話がうまく、ダンスや作文の才能もあってクラスの人気者である。
ただ、家が貧しいのか親がいないのか(その辺の事情は映画の終盤まで明かされない)彼は弁当を持ってこない。クラスメートの弁当を少しずつ分けてもらうか、それができない時は水道の水を飲んで空腹を我慢している。
途中でそのことに気づいたクラスメートが、みんなとても優しくて、分けてやるから一緒に食べようと誘ってくれる。
そこにいろんな教師が絡んでくる。
英語の教師は飛び切りの美人で、またスタンリーの一番の理解者でありファンであり、常にスタンリーを温かい目で見守ってくれる。
生徒たちにやたら厳しい理科の女性教師も出て来る。
そして、もうひとり、国語担当の男性教師は、これまたどういう事情か弁当を持ってこないで、いつも同僚の弁当を分けてもらっている。
この教師がどうしようもなく食い意地の張った、卑しい、大人げない男で、クラスで一番の金満家の生徒の、ステンレスの4段積みの弁当箱を狙って、昼休みに生徒たちを追いかけ回す。
そして、ついに、自分を避けて弁当を食べている生徒の中に、自分では弁当を持ってきていないスタンリーが含まれていることに腹を立て、「弁当を持ってこない奴は学校に来てはいけない」と、スタンリーを追い出してしまう。
ちょっとそこら辺の日本人には考えつかない設定と進行である(笑)
主役のスタンリーをはじめとして、この子どもたちの表情がとても良い。ドキュメンタリーでもこれほど活き活きとした表情はカメラに収められないだろうというくらいの良い顔である。
同級生や英語教師が陰でスタンリーを応援する。純真とはこういうものか、と観ていて嬉しくさえなってくる。心が軽く、明るくなって、温かいものが込み上げてくる。
途中何度か出て来るさまざまな弁当作りのシーンも、そこら辺の料理映画を凌ぐ鮮やかさと美味しそうさである。
最後にスタンリーの本当の暮らしぶりが漸く描かれる。そこには本当に本当にスタンリーらしい前向きな性格が描かれている。
素晴らしい作品である。
監督はアモール・グプテ。さもしい国語教師を演じたその人であり、かつスタンリーを演じたのがその実の息子であるというから驚きである。
文句なしに面白かった。
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