« 『写字室の旅』ポール・オースター(書評) | Main | 記念日のハンカチ »

Saturday, April 12, 2014

映画『クローズEXPLODE』

【4月12日特記】 映画『クローズEXPLODE』を観てきた。

2012年の『桐島、部活やめるってよ』で見た東出昌大がなかなか良いなと思っていたら、翌年NHKの朝の連続テレビ小説『ごちそうさん』で大ブレイクしてしまった。今回はその東出昌大が主演である。

この映画の主演を彼に決めた時には、公開時にこんな人気者になっているとは誰も予想しなかったはずだ。豊田利晃監督は「勘で決めた」と言っているが、本当に良い勘をしている。

案の定、映画館には東出目当ての若い女性が多い。こんな暴力映画ではありえない光景である。僕の後ろの列では女性が男性を誘って連れてきたようで、彼女が彼に解説してやっている。曰く、

「この映画、なんか第2作か3作らしいんで、見ても分からんかも知れんし、ひょっとしたら面白くないかもしん。けど、ええねん、私は東出くんが見られたら」

はあ、なるほどね。でも、お嬢さん、心配ないですよ、前2作で小栗旬や山田孝之が演じてた3年生が卒業した設定なんで、出演者が全面的に入れ替わって、ストーリー的にもそんなに引きずってる部分はないですから。

しかし、それにしても『桐島』にしても『ごちそうさん』にしても、どちらかと言えば甘い2枚目という役柄だった東出に、このゴミ溜めみたいな鈴蘭高校のテッペン役が務まるのか?

と思ったのだが、これが違和感がない。そもそも強いくせにぐずぐず言って却々喧嘩しようとしない転校生という設定なので、そこは今までの役柄とも大きな開きはない。一旦喧嘩となった際にもこれはこれでサマになっている。

なにしろタッパがあるのが映える。ジャンプしなくてもリンダマン(深水元基)の顔に殴りかけられる初めてのキャラではないだろうか?

で、監督が三池崇史から豊田利晃に変わった。

それで何が変わったかと言うと、さすがに豊田が入ってくると音楽の要素が強くなる。決め所のシーンの頭でジャーンとかき鳴らしてみたりするのは典型的な豊田演出である。劇伴だけでなく、ライブハウスのシーンなどもふんだんにある。

この人の血管にはやっぱりロックのスピリットが高い濃度で流れ込んでいる。まず、このことが最初に目に(耳に?)ついたことである。

で、今回は脚本に向井康介が参加している。豊田監督が前から一緒にやりたくて声をかけたという。前半は抑えた感じなのだが、緊張感が漲る感じがあったのは果たして向井の筆力によるものなのかどうかは分からないが…。

ところで、僕は事前にそのことを知らなくて、エンドロールを見て、あ、向井康介なのか、と思ったのだが、脚本には他に水島力也、長谷川隆の名がクレジットされている。3人って、どういう分担なのだ?

と訝ったが、水島力也というのはプロデューサーにしてトライストーン・エンターテインメント代表の山本又一朗が脚本を書くときの変名である。恐らく山本が豊田にオファーした時に用意していた台本というのが水島作だったのだろう。

パンフの豊田のインタビューによると、その時点の台本からは役名をもらっただけで、向井と温泉にこもって一から2人で書いたと言っている(では、長谷川隆は何なんだ? まいっか)。

で、この手の映画って、要するにどうやって最後は殴り合い(しかも入り乱れての擬闘)に持って行くかを競うものであり、どうやってセックスに持って行くかを競うポルノに似たところがある(笑)

最後の激しい激しいアクション・シーンに持って行くために、そこまでの盛り上げを用意しようとしていろんな設定を入れ込んであるのだが、冷静に見ているとそもそも無理があるし、やや破綻している(笑)

あまりにいろんなものを盛り込み過ぎで、2時間の映画では時間オーバーになって、結局どの人物の背景もうまく描ききれていない感が残ったのは少し残念である。多分、映像化されていない部分でいろんな想定や書き込みがあったのだろうな、と思う。

でも、まあ、そんなに難しく考えることもないだろう。要するに札付きの不良の殴り合いの映画なのである。これはまあこんなもんで良いのではないか。

前作からはやべきょうすけ、高橋努、深水元基という渋いところが残っている。新しいキャラでは早乙女太一、勝地涼、柳楽優弥、永山絢斗など、いままで結構なよっとした役もやってきた連中が見事に不良になりきっている。

脇では板尾創路のヤクザの親分がものの見事に印象的だった。豊田作品に欠かせない渋川清彦も出ている。

で、出演者のインタビューを読んでいると、みんながみんな口々に豊田監督を褒めていると言うか、豊田監督に対する尊敬の念が溢れているのである。こういう現場なら監督の演出は浸透するだろう。

監督自身も言っているが、事件を起こして復帰した後の3作がいずれも内省的な作品であったが、ここは一転してエンタテインメントに徹した感がある。非常に面白かった。

さて、なんと言ってもこのシリーズのいぶし銀は、僕はリンダマンだと思っている。

校内で腕っ節の不良どもがテッペンを巡って争っていても全く我関せずで、しかし、そのテッペンでもまず勝ち目がないくらい喧嘩が強いので誰も手が出せない、という役柄である。

この美味しい役を引き続き深水元基が演じており、今回も最後はテッペンを取った鏑木旋風雄(=かぶらぎ・かぜお、東出昌大)がリンダマンに挑んで行くところで映画は終わる。

さすがにリンダマンには勝てないんだろうな、と思っていたら、ひょっとするとこの映画、続編を作る気かな?と思えてきた。さて、どうなんだろう?

|

« 『写字室の旅』ポール・オースター(書評) | Main | 記念日のハンカチ »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/110115/59457605

Listed below are links to weblogs that reference 映画『クローズEXPLODE』:

« 『写字室の旅』ポール・オースター(書評) | Main | 記念日のハンカチ »