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Friday, March 21, 2014

映画『愛の渦』

【3月21日特記】 映画『愛の渦』を観てきた。『恋の渦』は見逃してしまったので、『愛の渦』は見とこうかと(笑)

いや、最初は観る気がなかったのである。こういう素材であまり良い映画は期待できないのではないかと思っていたので。ところが、随分評判が良いみたいではないか。ならば、ということで観てきた。

僕はセックスは「秘めごと」だと思っている。そう、「隠しごと」ではなく「秘めごと」(このニュアンスの違いを分かっていただけるとありがたい)。

その秘めごとの秘めたる部分を、文章で暴こうとするのであれば良し。しかし、映像で暴こうとすると、それは却々難しくなる、というのが僕の理解である。

何しろ映像は全てを映してしまう。文字通り赤裸々すぎるという問題がある。

そして、それとは逆に、文章であればどこまでも描けるのに対して、テレビであれ映画であれ、それが一般に公開される映像となると、描くわけには行かない領域がある、という限界もある。

そういうわけで、秘めごとを映像で描く(暴く)となると、その暴くべき範囲と、自然と暴かれてしまう領域と、社会的に暴くことができない制約とが微妙にずれていて、それがこの手の作品の成立を難しくするのだと、僕は見ている。

そういう風に、本質的に限界が微妙に絡まりあった難しい映画なのである。なのにこの映画は、ほとんどが裸のシーンであるとか、服を着ているのシーンは18分半しかないとか、そういう宣伝をしている。

──そのことに対して僕は反感を覚えた。そういうことではないだろう。

映像化する場合見せられない部分があるのだから、如何に裸を映すかではなく、如何に正面から撮らずに状況を伝えるかに心血を注ぐべきなのである。セックスを描いているのにこんなに裸が映っていないと言うなら大したものだと思うが、これでは誇るべきところが逆だと思った。

ま、もちろん、単に宣伝担当者の問題なのではあるが、しかし、このキャッチコピーはむちゃくちゃの台なしなのである。だから見ないでおこうと思っていたのである。

この映画は三浦大輔が自身の岸田國士戯曲賞受賞作を、自分で監督して映画化した作品である。だから、当たり前なのだが、とても演劇的な作品である。そして、設定が作品の8割がたを決定づけていると言って良い作品である。

場所は六本木の会員制クラブ。セックスをしたい男女が集まる。男性2万円、女性千円、カップルで参加する場合は5千円。

実際にあっても何の不思議もないサークルだが、しかし、描かれているのはありそうもない「秘密クラブ」である。

「乱交」で検索するとヒットすることを売り物にしている割には、集まった男女はあまりに整然としている。せっかく大勢で集まっているのに、常に男女1対1で交わっているところなど、このシチュエーションにリアリティはない。

それは単に人間性のリアリティを描く装置なのであって、設定自体にリアリティはなくて良いのである。そういう構造を見るにつけても、これは演劇で見れば良い作品である気がする。

舞台であれば、僕らは見えないところに壁や空を見、ありもしない小道具を役者が手に持っていると感じる。ただ、映像にはないものは映らないし、あるものは映ってしまうのである。

そして、映画の序盤では8人の客が一堂に会しているのに、喋っている人間は常にひとりであり、登場人物が順番に台詞を言って行くという、実生活ではありえない不自然がある。

それも演出法だから良いといえば良い。ただ、それは舞台の演出法である。映画にしてしまうと気になってしまう。ならばやっぱり、僕はこれは舞台で見れば良い作品ではないかな、という気がしながら観ていた。

もちろん、映像化するメリットもある。

舞台と違って、映画にすると、観客はカメラで切り取ったアングルでしか見ることができない。だから、監督のイメージ通りの画になるということもあるし、役者が全裸になっていても、どの観客からも局部は見えないという芸当もできる。

そして、大勢の役者のうちの2人が、こっそりと目配せをしたというような演技を、アップで割り付けることによって全ての観客に気づかせることもできる。

そういう効果がほしくて、三浦大輔はこの自作の戯曲を映画化したかったのかなあ、などと思った。

脚本自体には言うまでもなく巧さがあり、構成もしっかりしているし、細かなくすぐりもあり(最初に出てきた飲み物がカルピスであったところにいきなり笑ってしまった)、結構人が嫌がるところを取り上げた面もある。

ただ、性に対する意識というのは本当に人それぞれ、千差万別なのであって、人によってはこの映画を見て「本当に痛いところを突かれた」と感じる人もいるのだろうが、僕はそういうことはなかった。

池松壮亮、滝藤賢一、新井浩文、柄本時生(以上はクラブに来た客)、田中哲司(クラブの店長)、窪塚洋介(クラブの従業員)と、男性は結構名の通った役者を揃えているが、女性のほうは門脇麦、中村映里子、三津谷葉子と、いずれも頭の片隅に名前の記憶はあるのだが、うまく思い出せないようなやや小粒なキャストである。

ただ、この3人は非常に良い演技をしていた。そうか、中村映里子は『カケラ』の主演の子か、と終わってから思い出した。

そして、もうひとりの男性客になったデブ男は一体何者かと思ったら、『SR サイタマノラッパー』でダメなニート・ラッパーを演じていた駒木根隆介であった。

で、終わってパンフレットを読んで初めて、三浦大輔が『ボーイズ・オン・ザ・ラン』の監督であったことに気づいた。

そうか、あれはめちゃくちゃに良い映画だった。うん、そう思って比較してみると、原作のある『ボーイズ・オン・ザ・ラン』に比べて、三浦オリジナルのこっちのほうは、少し「知が勝ちすぎた」感じで、小粒でおとなしいものになった気がする。

ストーリーの閉じ方と言い、非常に余韻もあり後口の良い映画であったとは思うが…。ただ、映像的な面白さに欠ける気はした。交わっている4組の男女の真上をカメラが回り、クラシック音楽が被ってくるなどという演出は、ちょっと余計な気もした。

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