映画『劇場版 TIGER & BUNNY -The Rising-』
【2月8日特記】 映画『劇場版 TIGER & BUNNY -The Rising-』を観てきた。前作はテレビ・シリーズの1話と2話を再編集して、そこに大胆に書き足したものであったが、今回は完全新作である。
このテレビ・アニメが始まった時にはスポンサーのロゴを身につけて戦うヒーロー(しかも、そのスポンサーが BANDAI や Softbank などの実在の企業)という面ばかりが注目された(というか、そういう売り方をしたのだ)が、もうそういうのはサイド・ネタのひとつにすぎない。
──そう言い切れるぐらい、素晴らしい作品に仕上がってきたと思う。
観客は見事に大人ばかり。もちろん元から子供向けの時間ではなく深夜アニメだったということもあるが、これは「大人の鑑賞にも耐える」というような作品ではない。むしろ、大人でなければこの深さは分からないのである。
ヒーロー物の主人公が落ち目のロートルで、しかも、ヒーローとしての力が落ちてきたので「2部」に落ちたなんて設定が他のどの作品にあるだろう?
それ以外にも、空気読めない天然キャラのスーパーヒーローとか、自分があまり強くないことを知っていてネガティブ思考にとことん嵌っているヒーローとか、黒人のオカマ・キャラのヒーローなんて、どこの国のヒーロー物に出て来るだろう。
しかも、そのオカマ・ヒーローであるファイヤーエンブレムが、コンプレックスにつけいられて悪夢から醒めなくなり、漸くそれを克服して復活した時に、敵に向かって切った啖呵
「男は度胸、女は愛嬌って言うじゃない。じゃあ、オカマは何だか知ってる? オカマは最強よ」
ってのが泣けるではないか!
このドラマは群像劇なのである。そして、友情の物語である。一般人よりは強くても、それぞれに欠陥も弱みもあるさまざまな悩めるヒーローたちが、友情によって結束し、悪を倒す話である。
アニメだと思ってバカにしてはいけない。笑ってるうちに笑えなくなってくる。いつしか結構胸が熱くなる。
クライマックスでの、9人のヒーローたちがチームプレーで次々と強敵を撃破して行くシーンの、なんと胸のすくことか!
そして、見終わった後に生きる気力や勇気が湧いてくる作品である。前作の時にも書いたが、これはアメコミには決してできない芸当だと思う。
伝統的な手描きの部分と如何にも CG らしいアニメの動きの2つの絵柄が見事に溶け合っている。良い作品だなあ、と改めて思ったのであった。
2500円(映画のチケットより高いではないか!)もする「豪華版パンフレット」を買ってしまった(笑)
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