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Saturday, February 01, 2014

映画『ジャッジ!』

【2月1日特記】 映画『ジャッジ!』を観てきた。

最初は観ないつもりだった。というのは、僕の経験からすると、無論一般論でしかないが、「CM出身の映画監督は瞬発力はあるが持続力がない」からである。

つまり一つひとつのカットやシーンではものすごく面白い台詞のやりとりや画作りがあるのに、映画全体として観ると結局印象に残らないことが多いのである。やっぱり普段15秒や30秒の世界で勝負をしているからなのかな、などと常々思ってきた。

ところが、この映画、あまり貶している人を見かけない。全体にそこそこの評価で、中にはすごく褒めている人もいる。ならば観てみようかという気になった。

仕事の面ではあまりパッとしない、バカが付くほどお人好しのCMクリエイター太田喜一郎(妻夫木聡)が、我がままなスポンサーと自分のことしか考えない上司に振り回されて、無理難題を背負わされるコメディである。

その無理難題とは彼が勤務する広告代理店「現通」の大スポンサーであるちくわ堂の社長のバカ息子が作ったクソみたいなCMを、彼が無理やり審査員を押しつけられたサンタモニカの国際コンクールで入賞させることである。

前半、僕はイマイチ入り込めなかった。

この手の業界コメディでは、業界のあり方をトリビア的なことを含めて如何に事実に忠実に描くかという面と、それの適切な一部分を切り取って如何に思い切ってデフォルメするかという面がある。

その2つのバランスが取れて初めて、作品は見事な風刺になるのだが、僕には少し土台の部分を崩しすぎた浮ついたものに見えた。オーナー社長がやっているちくわ屋が全世界に向けて宣伝費230億円をかけるとか、広告祭の審査があまりにもハチャメチャであるとか、そういう部分である。

ただ、どことなく間抜けで、でも根は真面目という役柄は妻夫木にあまりにぴったりで憎めないのである。

国際広告祭の審査のシーンでは、ちくわ屋のCMがどうなるか以外に、知らぬ間に出品されていた太田自身の大失敗作(これが現実の企業であるエースコックのCMになっている)の行く末、そして、本命であるアメリカのビールのCMと、広告代理店「白風堂」の木沢はるか(鈴木京香)のトヨタのCMとのグランプリ争いを、審査員同士の人間関係を絡めるなど、結構多くの要素を織り込んで、単純に予想の付かない展開にしてある。

で、終始バカバカしいのであるが、終わってみるとなんだか後口が良いのである。ラスト近くでブラジル人審査員カルロス(荒川良々)が太田に言った「現場で会おう」という台詞がなんだか胸に沁みてきたりするのである。

そんなに多額の予算のついた映画とは思えないのだが、キャストがやたらと豪華で、ちょっとした役で名の通った役者がいっぱい出て来る。

そして、太田と同僚の大田ひかり(北川景子)との、コメディにありがちな、喧嘩しながらも最後はロマンスみたいな要素も織り込んであるし、広告祭の審査員役では個性豊かにたくさんの俳優が出て来るし、多牌状態で空中分解しても不思議でない話を非常に手際よくまとめてある。

賞をとるような映画ではないし、一生記憶に残る作品でもないとは思うのだが、これは却々良い味付けの作品になっていると思った。

誇張されて現実味にやや欠ける役柄が多い中で、「サイテー」と言われてもピクリともせずに、ただ自分の地位だけを守ろうとする太田の上司・大滝が、ありえないようなサイテー野郎のくせに如何にもこの業界にいそうなリアリティを醸し出しているのは、さすがにトヨエツという感じであった。

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Comments

私もつい最近、観に行きました。ネットでの評判が良かったので。
永遠の0、なんかが流行ってますけど、泣いたり、考えたりするのはちょっとしんどいなぁって人にはちょうどイイ感じの(笑)。
私は細かいところでクスクス笑いながら観ました。
薄くてありがちな内容なんだけど、記事に書かれているように
ほんとまとめ方が上手いというか、最後まで飽きさせないですよね〜。
家に帰ってから、思わずエースコックのCMソングを口ずさんじゃいましたヽ(´▽`)/。

Posted by: リリカ | Saturday, February 01, 2014 23:03

> リリカさん
♪コン、コン、コン、コーン(笑)
なーんか耳に残りますよね。ニャー(笑)

Posted by: yama_eigh | Sunday, February 02, 2014 09:36

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