映画『Seventh Code』
【1月21日特記】 映画『Seventh Code』を観てきた。平日の夜に映画を観ることはあまりないのだが、何せ関西で1館のみ、1日2回、1週間限定の上映なので、行ける時に行っておかないと終わってしまうのである。
映画の設定やストーリーについては何の事前知識もなく観た。
冒頭、キリル文字の看板が見える都市。多分ロシアのどこかだ(後にウラジオストクだと判る)。走り出した青い車を追いかけて、スーツケースを引きずった女が全速力で走る。前田敦子だ。
駐車してくれたこともあって女は奇跡的に青い車に追いつく。そこから男が降りてくる。これは『HK/変態仮面』の鈴木亮平だ。
女は「松永さん」と叫んで男に駆け寄る。スーツケースは道端に投げ捨てたまま。ところが男は女のことをよく憶えていない。「六本木で声をかけて食事に誘ってくれた」と言われて少し思い出す。
女はもう一度松永さんに会いたくて、探しまわって居場所を突き止めて、ロシアまで追って来たと言う。男はとりあえず近くの喫茶店で女とお茶を飲むことにするが、適当にあしらって、まいて、逃げ出す。
そりゃそうだ。よく知らない女にロシアまで追って来られたとなると怖い。誰でも逃げるだろう。
でも、女はどこまでも諦めない。重いスーツケースを引きずって走る。走って走って青い車に追いつく。松永がビルに入ったのを見て窓から忍び込む。女が何者なのか判らないが、この尋常ではない執拗さと屈強さ。得体が知れず、怖い。
──とまあ、この辺までは、如何にも黒沢清監督らしい引っ張りなのである。ところが、この後あまり観客の緊張感を保ったまま揺さぶったり引きずり回したりすることができていない。
結論を先に書いてしまうと、最後まで見終わってみると、結局これは前田敦子のプロモーション・ビデオ以外のなにものでもなかった。
スタッフ・ロールになると、一番上に秋元康の名前。あ、やっぱり、という感じ。
秋元が敦ちゃんのために一流監督に頼んでプロモーション・ビデオを作ってもらったよ、という感じなのである。1時間という短い作品であることもあるが、これぞ黒沢清!というところがあまり見つからないのである。
いや、黒沢清の色合いは随所にあるにはある。しかし、少なくとも宣伝チラシに書いてあるような、「鬼才・黒沢清が仕掛けた罠に世界が驚愕!!」というほどの印象はない。それに普段の黒沢なら、もっともっとカメラ・ワークが怖いはずである。
しかし、とは言え、他ならぬ秋元康ではないか。なんでこんなことに? 自分とこのタレントが可愛いだけで作品のことなんかさっぱり解らないB級芸能プロダクションの社長でもあるまいに。
中盤から松永がどうやら怪しい仕事をしている人物だと判ってきたり、女はどんな目に遭ってもますますものすごいサバイバル能力で切り抜けてきたりして、ストーリーは徐々に動く。
しかし、もう一人の日本人・山本浩司が絡んで来る辺りから、筋運びにちょっと安易さが見えて来て、映画全体がややチャチな感じになってしまっている。
ただ、最後の最後まで観客の予想を裏切った展開の連続になっているところが、これはさすがに黒沢清という感じではある。そして、ロシアの荒涼たる景色を映画の基調にして、全体のトーン・コントロールもできている。
ま、だけど、基本線はやっぱり前田敦子のプロモーション・ビデオかな。ま、これはこれで良いけど(笑)
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