食べない恐怖
【1月25日特記】 妻が「胃の調子が悪いから、暫く食事抜こうかな。2~3日食べなくたって死にはしないし」なんてことを言うので、自分のことに思い当たった。
僕には長らく「食べなければ死んでしまう」という恐怖感があった。もちろん、1食抜いたからすぐ死ぬとは思っていなかったが、でも、「食事を抜くとその日の活動に支障を来す」という恐怖感があった。
睡眠についてもそれは同じで、寝ないと死ぬ、と言うか、睡眠時間が短いとその日の活動に支障を来してしまう、という恐怖感がやっぱりあった。
物心ついたころから神経質な子供と言われた。几帳面な性格だった。それ故生まれた恐怖感なのだろう。年を取って少しいい加減さを身につけて、漸くその恐怖感から抜けだした気がする。
ひょっとするとどこかに書いたことがあったかもしれないが、実は僕には小さいころ空腹感というものがなかった。
空腹感がなければ、それこそ食べるのを忘れて死んでしまうのでは、と思われるかもしれないが、そこは人間の体、よくできたもので、アラームはちゃんと発動するのである。
それは胃痛である。お腹が減ってくるといきなりキリキリと胃が痛むのである。そう、僕は胃痛に悩む小学生だった。だから、毎晩毎晩、早く食べ始めないと胃痛が始まるという恐怖感があった。
中学生になって初めて、心地良い空腹感というものを感じられるようになった。
「ああ、これがみんなが『お腹減ったなあ』などと呑気に言っている時の感覚なのか!」と最初に思った日のことを今でも鮮明に憶えている(僕はその時階段の中段に座って、夕食の準備をする母を見下ろしていた)。
ひょっとしたら、あの空腹時の胃痛の恐怖感が、食べないと死ぬという恐怖感に繋がったのかもしれない。
いずれにしても、そういう恐怖感から抜け出せて良かった。人生は少しずつ良くなって行く。
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