映画『風俗行ったら人生変わったwww』
【11月16日特記】 映画『風俗行ったら人生変わったwww』を観てきた。
飯塚健は僕の贔屓の監督で、今まで『放郷物語』『彩恋 SAI-REN』『荒川アンダーザブリッジ THE MOVIE』と3本の映画を観てきた。ついでに言えば、テレビ・シリーズの『荒川アンダーザブリッジ』も全話観ている。
しかし、いずれも出色の出来と言って良いそんな作品と比べると、残念ながら今回はちょっとインパクトに欠けていた。
原作は知らなかったのだが、2ちゃんねるで大評判になった話で、書籍化もされていた。
観る前に思ったのは、フーゾク嬢を演ずるのが脱がないに決まっている佐々木希であること。それで映像上のリアリティが保てるのだろうか?と大いに心配したのだが、主人公はデリヘル嬢を呼んでお金を払いながら、いつも結局何もしない(できない?)、という話であったので一件落着である。
29歳童貞、コンピュータ(ハード)関係の契約社員、ニート歴あり、コミュニケーション苦手、パニック障害で時々過呼吸にもなる遼太郎(満島真之介)が自分を変えたい一心で勇気を振り絞ってデリヘルを呼ぶ。
やってきたのが信じられないほど可愛くて純粋なかよ(佐々木希)。遼太郎はいっぺんに恋に堕ち、その恋を通じて彼の人生が変わって行くという話。
言わば『電車男』の同工異曲である。電車男と対照的なのは、電車の彼女はお礼にエルメスのカップを送ってくるようなセレブっぽい女性だったのに対して、こちらは訳ありのフーゾク嬢だということ。
その『電車男』も同じように映画化されたが、あれは原作を読んでいた僕にとっては失敗作だった。
ただ、あの映画がものすごく巧かったのは、電車の書き込みを2ちゃんで読んで応答してくる人たちの処理。DVEで画面を分割して、そこにコンピュータの向こう側にいる人たちの映像を埋め込んでいったこと。
今回はそれをパソコンのモニタ画面を分割してやってしまった。これは大失敗である。相手の姿は見えない中で行われる、あくまでテキストだけのコミュニケーションが2ちゃんなのである。それを PC の画面の中に映してしまっては台なしではないか?
この映画の制作者が2ちゃんねるというメディアの特性を如何に理解していないかということを見事に露呈してしまった。
僕はこれはこの映画の致命的なミスであると思う。もちろん遼太郎に彼らの姿が見えている設定にはなっていない。しかし、ならばどうして映画の画面全体ではなく、PC のモニタに嵌め込んだ画面上で彼らを描いたのだろう?
そして、かなり早い段階から、3次元の彼らを遼太郎の隣に登場させている。これも遼太郎に見えているという設定ではない。あくまで2ちゃんでの会話をこういう形で表現しているのだが、これも非常にまずいと思った。
ただ、非常に良かったのは、佐々木希が随分演技が巧くなっていたこと。彼女を初めて観たときは「ダメだこりゃ」と思ったのだが、いつの間にかしっかり女優になっている。
そして、(これは初めて観た時からそうだが)可愛い。どういう表情をすれば自分が一番可愛く映るかもちゃんと心得ている(そういうのはとても大事なことだ)。
かよはとても素直な女の子なのだが、すぐに悪い男に捕まって振り回されてしまうタイプ。その結末がフーゾクである。結構いるんですよね、こういう娘。
それに惚れた遼太郎のほうは、満島真之介がもうこれ以上デフォルメできないくらい、力入りまくりの今にも破れそうな力演。ま、これはこれで良いか、という感じw
この2人の恋を、2ちゃんで知り合った、若くして株で大儲けしている晋作(松坂桃李)が、2ちゃんから抜けだしてリアルに遼太郎の前に現れて助けて行くという話なのだが、その辺りからストーリーは荒唐無稽になってきて、これ、原作ではどうだったんだろう?と気になった。
とまあ、いろいろあって、最後の橋の上での遼太郎とかよのシーン。映画の初めのほうでもカメラが遼太郎の周りを回るシーンがあったが、ここでは2人の周りを回る。どこまで回るかと思うほどグルグルグルグル何周も回る。
しかし、いい加減に回っているようでありながら、1ショットになったり2ショットで会話を収めたり、かよの背後から遼太郎を撮ったりと、随分考えながら回っている。
しかも、途切れずにずっと回っているということは、これ、めちゃくちゃ長いワンシーン・ワンカットなのである。遠くに見える橋の欄干から2ちゃんの住民が眺めているのがかすかに識別できるという構図も面白く、この辺の画作りはさすがに飯塚健という感じがした。
短めの映画だったが、もっと尺を取っていろんなエピソードを書き込んでも良かったように思う。まあ、次回作に期待かな。
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