ある種のリテラシー
【10月11日特記】 昨夜、産経新聞が誤って「村上春樹がノーベル文学賞受賞」という電子号外を出してしまった。
「何をバカなことやってるんだろう」と思われたかもしれない。いや、それはそれでごくフツーの反応である。
ただ、どうだろう? あなたはこんな風に「予定原稿」なるものを用意しておくのだということを知っていただろうか?
僕はテレビ局に入社するまで知らなかった。ふーん、そういうものなのか、と驚いた。
最初に存在を知ったのは、かなり偉い人の死亡記事(いや、むしろ追悼記事と言うべきか)だったので、こういうのは不謹慎なのか別にそうでもないのか、自分でも少し考えこんでしまった。
でも、もう恐らくは長くないであろうと思われている人で、亡くなったら間違いなく大きなニュースとして扱われる人であれば、それから慌てて経歴を調べ始めたり、過去映像を拾い集めたりしていて、出すのが遅くなってしまうのも惜しい話である。
テレビの場合は映像がついていて、つまりは編集という作業を経なければ放送に出せないわけで、それを考えると、予定稿として「途中まで作っておく」というのは賢いやり方で、慌てて間違えた情報を出してしまうことに比べればむしろ丁重な扱いであり、不謹慎ではないとも言える。
ま、なんであれ、昨日の産経の失敗で初めてそういうものの存在を知り、そういうやり方に気づいた人もいるだろうと思う。
そういうことを考えると、こういうミスは(もちろん村上春樹さんにとっては失礼千万であるが)一般読者にとっては、ある種のメディア・リテラシーの教科書になったのではないかと、僕は思った。
紙の号外であれば、こんなに簡単に誤発行されなかったはずだ。Web上の号外であったからこそ、1クリックの間違いで発行されてしまったのである。
このメディア特性の違いに思いを馳せることができた人は、きっとメディア・リテラシーの第2歩を踏み出すことができるに違いない。
Comments