『ユーザーファースト』友澤大輔(書評)
【9月2日特記】 Yahoo Japan のマーケティングイノベーション室長が書いた本だが、別に面白い本ではない。目から鱗が落ちるようなことが書いてあるわけではない。
いや、それは僕がたまたまこういう世界に近いところにいるのでそう思うだけで(ちなみに僕はこの友澤さんという人にお会いしたことはない)、そうでない人が読むと結構面白いのかもしれないし、目から鱗が落ちるのかもしれない。
ただ、面白いか面白くないかは別として、良質の本だと思う。インターネットとテレビを取り巻くマーケティングの現状を解りやすくまとめてある。網羅感はないのだけれど、適切な例を抜き出して象徴的にまとめてある。一人をのぞいて適切な人にインタビューして現状を炙りだしている。
問題点をえぐりだしてはいないが、問題点をきれいに並べ立ててある。それだけと言えばそれだけなのだが、そういうことをこんな風に読みやすくまとめてくれている本はそんなに多くはない。
この本で多少ともキャッチーなのはタイトルにもなっているユーザーファーストという言葉だけである。
これは Yahoo Japan においては社是に近いものらしいが、決して目新しい造語ではない。だが、目新しくないところがまさにミソで、「そう、そんな簡単なことに気づいていなかったのか!」という感興を引き起こす(特に我々テレビ業界の人間には)。
いや、この本を読んでそう思うかどうかで、むしろ我々が試されているのではないかという気さえする。
この後を考えていくのはこの本を読んだ我々自身なのである。そう、これはそういう本だと思う。だからこの本はこんなに普通っぽいのかもしれない。
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