SHORT SHORTS FILM FESTIVAL & ASIA 2013 in OSAKA
【7月20日特記】 グランフロント大阪のナレッジシアターに SHORT SHORTS FILM FESTIVAL & ASIA 2013 in OSAKA を観に行ってきた。
SSFF は原宿で誕生した短編映画祭で、今年で15年目だそうな。途中から加わった SHORT SHORTS FILM FESTIVAL ASIA は今年で10回目とのこと。(しかし、それにしても、この & の使い方は変だ)
2004年に米国アカデミー賞公認映画祭に認定され、本映画祭のグランプリ受賞作品は次年度アカデミー賞短編部門ノミネート選考対象になるとのこと。
今回は5000本以上集まった中から東京でのコンペティションで上映された80作品のうち、18本を厳選して大阪にもってきたもの。タイムテーブルは 18本を PROGRAM-A, B, C に分けて組んであり、僕はその PROGRAM-C (6本)を観てきた。
上映前にこの映画祭の歴史を綴った紹介ビデオがかかっており、これがまた DVE やら CG やら、ありとあらゆる技術を駆使した見事な編集ぶりで、ちょっと感心した。
『葬式』(Min-young Yoo 監督、韓国、16分)
急死した夫の葬式の話。夫の遺品の中から、女性物の靴が出てきた。自分へのプレゼントかと思ったらサイズが合わない──というところから、葬式という気分がふさぐ儀式の中で、淀んだような、しかし、微妙にさばさばしたようなドラマが展開される。
独特の味があって上手い。終わり方も非常に良い。何よりも、韓国での葬式というのは結構日本に近い形なのだなあと、映画の本筋とは違うところで感心してしまった。
台詞を徹底的に削って、語らない台本でドラマを語っている。美男美女は登場しない。そこがまた非常に市井感が出て、何とも言えない。うん、何とも言えない味を出すことのできる監督だと思う。
『プラット・ホーム』(Robin Walters 監督、ニュージーランド、4分)
これはちょっとブラックなショート・コメディ。ほとんど一人しか登場しない。また、その男が妙にハイ・テンションでおかしい。
駅のホームで電車を待っていると、視界の端のほうで素っ裸の男が動いたのがチラリと見えた。それを追って行くと──という展開。
全然予想もしなかったオチになっていて、エピローグでまたニヤリとしてしまう。短くてキレのある作品。
『寿』(田中希美絵監督、日本・シンガポール、15分)
これは日本の話。30歳の誕生日を迎えた独身女性の揺れ動く心、とでも言うか。主演の女性は、美人ではないが不思議な魅力がある。ただ、脚本が時々観客を置き去りにして走りだす感じがある。
「よし、次はこうしよう」と頭で考えているのが見えてしまう感じがある。ちょっと惜しい。それにしても、なんか外国の監督が日本に来てロケをしたような、妙に日本離れした雰囲気が出ているのは何故なのだろう?
『泥棒』(Greg Rom 監督、南アフリカ、10分32秒)
この監督が一番プロらしい力量を感じさせる。銀行でのオープニングのカメラの動きなどはハリウッド映画さながらの計算し尽くされた構図という感じがした。てっきりアメリカの映画かと思ったら、南アフリカと知ってびっくりした。
銀行強盗の話である。しかし、ミソはこの銀行強盗の男女を2人ともパントマイマーにしたこと。
強盗がパントマイマーなどと言われると、パントマイマーが映画の中で強盗役を演じているのか、それとも映画の設定で強盗が実はパントマイマーだったということになっているのか分からないかもしれないが、それも観客の感じ方次第である。
何しろパントマイマーなので脅すときもピストルではなくピストルの形にした指を突きつける。金庫から何を盗んで鞄に詰めているのか、観客にはまるで見えない。観客の我々にだけ見えないのか、銀行で人質になっている人たちにも見えていないのかも分からない。
ものすごく面白いアイデアである。あっけらかんとしたエンディングも爽やかである。今日の白眉と言っておこう。
『虹絵』(Gitanjali Rao 監督、インド、15分14秒)
これはアニメーションなのだが、画のタッチといいストーリーといい、ちょっと真似のできない独創的なものになっており、とても素晴らしかった。
原題は Printed Rainbow である。このほうが感じが解る。
冒頭、雨が降っている。絵全体にすりガラス状のフィルターがかかっている。人物も家具も、だから、微妙にはっきり見えない。これは雨の日の比喩なのだろうか? あるいは主人公のおばあさんの何かをなぞらえているのだろうか?
このおばあさん、綺麗な絵柄のマッチ箱を集めるのが趣味らしくて、そのマッチ箱を見ながら、いろんなところに冒険旅行をしている自分を想像する。そして、マッチ箱が出てきた途端に、全体にかかっていたすりガラスのフィルターはなくなり、総天然色の世界になる。
設定も展開も見事であり、何とも言えない読後感がある。
『死神失格』(渡邊世紀監督、日本、20分36秒)
これは吉本興業の映画なのだけれど、僕とは笑いのツボが合わなかったようで、僕にとっては外れだった。
なだぎ武が扮する間抜けな死神がいて、そいつが手術中に爆発事故が起こった病院の手術室に現れて、自分のケアレスミスのために何度も謝りながら、誰が死ぬか皆さんで決めてくれ、誰が生き残るか皆さんで決めてくれ、などと言って周囲を振り回す話。
田中要次や中越典子など、結構名の売れた役者が出ている。
吉本らしいドタバタではなく、もうちょっとシュールな線を狙ったようだが、もうひとひねりほしかった。
僕が敬愛する板尾創路が主演で監督だったら、もっともっとシュールで、笑えるような笑えないような(そこが面白い)映画になったのではないかと思う。
ま、ただ、なだぎはよく嵌っていた。
以上6本である。
全体に非常にレベルの高い上映会だった。PROGRAM-A や B を観た人もきっと満足されたのではないかと思う。
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