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Saturday, May 11, 2013

映画『探偵はBARにいる2』

【5月11日特記】 映画『探偵はBARにいる2 ススキノ大交差点』を観てきた。

前作も観た(依然として原作は読んでいないが)のだが、驚いたのはこの映画が一昨年のキネ旬ベストテンの第10位に入ったことだった。

確かに面白かった。しかし、賞に選ばれるような映画だったか?

「面白い映画なら賞に選ばれて当然」という反論もあるかもしれないが、僕はちょっと違う感覚でいる。

見終わって「ああ、面白かった。大満足」──でも、別に賞に選ばれたりしない映画というのもあるのである。この映画はそういう映画だと思っていた。もちろん、だからと言ってそれが質の低い、値打ちのない映画であるとは言わない。

しかし、プロの審査員の投票で上位に食い込むには、それなりの評価のポイントというものがあるはずである。このポイントが僕にはあまりピンと来なかった。今回はそれを見極めたいなという気もあって観に行った。

などと言いながら、例によって前回観た映画についてはほとんど何も憶えていない(笑)

しかし、見始めて徐々に思い出した。ナポリタンがめちゃくちゃ不味い喫茶店の国籍不明のウェイトレスが出てきたのである。その役を演じている安藤玉恵の大ファンである僕は、前の時も彼女のシーンを大喜びして観たのだった。

他にもヤクザ桐原組の幹部・相田(松重豊)、対抗する花岡組の佐山(波岡一喜)、北海道日報の記者・松尾(田口トモロヲ)、風俗街のポン引き・源ちゃん(マギー)、そして探偵がいるバーのバーテンダー(桝田徳寿)ら、レギュラーのサブ・キャラがともかく個性豊かに描かれていて楽しいのである。そう、これはそういう映画だったのだ。

そして、この映画の面白さの中心的な部分は大泉洋と松田龍平という組合せの妙だと思うのだが、それぞれがそれまでにたくさん演じてきたイメージと少しずれているところがなお面白いと思う。

大泉洋は従来どちらかと言うと「お調子者のいい奴」という役柄が多く、「頭脳明晰でタフな名探偵」というイメージはなかったし、松田龍平には(まあ、『ボーイズ オン・ザ・ラン』で見せたような喧嘩の強い役回りもあるにはあったが)、「豪腕の用心棒」というようなイメージはなかった。

そのずれたキャスト同士が互いに意外な相手と結びついて、意外な化学反応を起こしているというのが僕の見方である。松田龍平が大泉洋を前にしてボケまくるという構造が非常に面白い。

でも、それだけでキネ旬10位には入らないだろう。そうそう、この2人を取り囲むサブ・キャラたちの充実を僕は忘れていたようだ。そういう意味で本当によく書き込まれた、細部に目の行き届いた脚本だと思う。

今回のゲスト女優である尾野真千子の役は当て書きに近かったらしく、大阪弁を含めてものすごく尾野真千子らしい色鮮やかな登場人物になっていた。そして、もうひとりのゲスト、渡部篤郎が演じた政治家・橡脇は、善悪の2色で塗り分けられない描き方をしていて、これも非常にリアリティのある良い描き方だと思った。

そう考えると、このシリーズの要諦は結局のところ脚本の冴えなのだろうなと思った。人物が適度にデフォルメされて、しかし、ちゃんと描けていて、随所でしっかり笑いが取れる本だった。

ただし、それだけではない。今回もアクションはかなりすごい。いや、前回よりも入り乱れて、かなり大掛かりな擬斗になっている。よくこんなもの撮ったなあという感じがした。

ストーリー展開としては、物語の最後に明かされる「秘密」について、僕は件の人物が最初に登場したシーンから想像がついてしまったが、ま、僕の場合はトリックとか謎解きにあまり興味がなく、人物さえ描けていれば満足なタイプなので、ちゃんと楽しんで観られた。

ま、それでも、これ、賞を獲るような映画かな?という思いはやっぱり残ってはいるのだけれど(笑)

最後のシーンで探偵と相棒が煙草を吸うシーンで、流れてきたのは鈴木慶一とムーンライダースの往年の名曲『スカンピン』。なるほど、そう来たか、ああ、僕以外にもこの曲好きな人いるんだ、と前奏の1小節目で思ったら、パンフの最後のページに音楽評論家がこの曲について、思い入れたっぷりに書いていた。

良いラスト・テーマである。終わり良ければ全て良し、という感じである。


【5月12日追記】 シリーズ第1作の時の自分の映画評を改めて読み返してみると、僕は古沢良太の脚本に対しての拒否感を書いている。ああ、そうだった、そんなことを感じたのだった。

結論から言うと、今回は特に嫌な感じのするところはなかった。

「恐怖感も肉体的苦痛も描いていない」と書いたことに関しては少し緩和されており、探偵がビビるシーンも何ヶ所かあった。そして相棒のほうは何で殴られても死なないというコミカルな設定にしている。そこまで進めてしまうとリアリティのなさが吹っ飛ぶのである(笑)

大泉洋の探偵像も「中途半端なカッコ良さ」から少しお馬鹿路線にシフトしている(女に入れあげてセックス漬けになるシーンを見よ)。そうすることによって、「でも、いざというときにはこんなにカッコ良いんだ」という印象を残せるのである。

大泉と松田龍平のコンビは前より絶妙になってきた。

そして、安藤玉恵の抱腹絶倒だけは変わらなかった(笑) この映画もヒットして、もし第3作が作られたら、僕は安藤玉恵見たさだけで、また観に行きそうな気がする。

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Comments

「スカンピン」にはびっくりしましたー!
ちょいとうれしい感じとおまけの幸せ感でした。
次回は小坂忠の「しらけっちまうぜ」あたりをお願いしたい!などと考えてしまいました。

Posted by: tom | Tuesday, May 21, 2013 at 11:17

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