『ダークシャドウ』
【5月3日特記】 WOWOW から録画しておいた『ダークシャドウ』を観た。
公開直後に「如何にもティム・バートンとジョニー・デップが作りそうな映画。でも、ちょっと飽きたなあw」という評を読んで観るのをパスしたのだが、今日観てみてびっくりした。
夫婦で観たのだが、2人して大喜び、大満足! ティム・バートンの作品をそれほどたくさん観ているわけではないが、これは彼の最高傑作になるのではないかとさえ思った。
舞台は1760年代の英国に始まり、やがて米国に渡ったコリンズ家が繁栄し、ところが当主バーナバス(ジョニー・デップ)がヴァンパイアにされて埋葬されてしまうところから、今度は一気に彼が生き返る1970年台の米国へと飛ぶのだが、この前段のテンポの速いこと速いこと。
しかし、語り口が速い一方で、カメラ・アングルやらセットやら音楽やらのこの凝りようは何だ? 最初からおかしくて仕方がない。
全体的に冗談とクソ真面目、シリアスとコメディ、ゴシックとポップ、歴史とパロディ──そんなものが渾然一体となっている。
弄んだ下女が実は魔女で、逆恨みされてヴァンパイアにされてしまい棺桶に閉じ込められるが、約200年後に掘り返されて復活し、コリンズ家復興のために粉骨砕身しながら時々人を襲って生き血をすする、というような設定が誰にも真似できない奇想天外で、ギャグのマニアックなぶっ飛び方も半端ではない。
エヴァ・グリーン、ヘレナ・ボナム=カーター、ジャッキー・アール・ヘイリー、クロエ・グレース・モレッツ、ガリー・マクグラスらが演じるキャラクターが、どれをとっても一筋縄では行かないおかしさ、というか(一般常識から見たら)壊れ方をしており、「おっと、そう来るか」という笑いが絶えない。
PG12に指定されているのは吸血鬼が人を襲う残虐シーンのためではなく、下ネタのせいなのだが、怪物同士のセックスのこのシュールさには参ったと笑うしかない。
でも、なんとなくゴシック・ホラーっぽいムードは随所に残っていて、そこに1970年台の世相風俗が絡んできてとんでもないごった煮の様相を呈している。アリス・クーパーやらカーペンターズといった音楽小ネタも笑える。
ともかくくすぐられる。そして、「やられた!」感に襲われるw
バカバカしい話なのに画作りはしっかり芸術だし、ストーリー的には一貫して愛の物語であるところも何とも言えない味が出ている。
他の誰にも書けない話であり、他の誰にも演じ得ないキャラクターであり、他のどの監督にも決して撮れない映画と言って良いのではないだろうか。
ああ、面白かった。
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