9年後の新入社員諸君に
【4月2日特記】 まず、これを読んでみてください。
「新入社員諸君!」
新入社員諸君、肝に銘じておいてほしい。君たちはまかり間違ってひどい会社に入ってしまったのだ。
君たちのうちの何人かはすぐに絶望して会社を辞めてしまうだろう。逆に別の何人かは環境の如何に関わらず立派な仕事をする(例えば良い番組を作る)かも知れない。しかし、残りの大多数は、ひどい会社の中ではひどい仕事しかできないはずだ。
だから君たちの当面の課題は、この会社をもう少しましな会社に変えることにある。
愛社精神などというカビの生えた代物を引合いに出すつもりはない。そんなものは僕にさえないと公言できるから。単に切羽詰って、この会社を改善しようとするだけのことだ。
そのためには臆することなくものを言うことである。臆せず言ってしまったために、会社が君をもっとひどい目に遭わせることは考えられるが、それは仕方がない。一番まずいのは、そういう覚悟もなくものを言ってしまうことである。
脅しているつもりはないのだけれど、このニュアンス、解ってもらえるだろうか?
いきなり何だ、これは?と思われたかもしれません。これは私が9年前に社内メールマガジンに書いた記事です。
当時私はテレビ営業局に所属しており、そのテレビ営業局が「全社員に営業感覚を持ってほしい」という狙いで始めたのが、この社員向けメールマガジンで、私は毎回その巻頭言を書いていました。
で、今読み返してみて、書いていることが正しいか間違っているか、表現自体が上手いか下手かは別として、こういうスタイルの表現はこの時期がギリギリだったなあと思うのです。
9年前だからこそ、この記事はある種のアイロニーとして、パラドックスとして(たとえ一部の人間に対してだけだったとしても)機能したのではないだろうかと思うのです。
今年の新入社員に向かってこういうことを言って通じるでしょうか? 私は自信がありません。これを読んだ大半が「無能な上司」と怒り出すか、あるいは嫌気が差してさっさと会社を辞めて行くか、どちらかではないかと思うのです。
あるいは、これは通じるでしょうか。その1つ前の号に書いた記事です。
「営業マン諸君!」
営業を去るに当たって、私が自ら感じていたり先輩から教わった営業マンの心得みたいなものを書き残しておきたいと思います。
1)社内を制するものは社外を制す
セールストークが下手でも構わない。社内を説得し切る力があれば、必ずや社外の人間の信頼を得ることができる。
2)脇を空けて突っ込んで行け
最後のタイミングが来るまで脇を締めてはいけない。ただし、引いていないで突っ込んで行くこと。相手に付け入る隙があると思わせることによってセールスは次の段階に進み、新たなバリエーションが生まれる。
3)会社や上司が嫌われることになっても、しぶとく自分だけは生き残れ
「あの会社は良い会社だが担当者がひどい」と思われたらそこから先はない。「あの会社はひどい会社だが(あるいは部長はサイテーだが)担当者は良い」と思われている限り、仕事はできる。
まだまだありますが、字数が限られているのでこのくらいにしておきます。ところで、ひょっとして、これって報道や制作でも当てはまってませんか?
私はベテランの成功体験が若手の芽を摘んで押し潰してしまうことがあると肝に銘じています。
だから、「こうでなければいけない」という言い方はしたくありません。でも、成功体験はそれとして伝えておきたい。年を取ってくると特にそういう欲求が強まってきます。
だから、「お前らこうしないとダメだぞ」ではなくて、「俺の場合は、俺の時代には、こんな風にしたら巧く行ったんだ。うん、たまたまかもしれん。あとは自分で考えてくれ」──そんな言い方をしたいと思っています。
でも、どんな言い方をしても、もう我々のノウハウも思いも、ひょっとしたら彼らには決して伝わらなくなってしまったんじゃないかと思うことがあるのです。
そうそう、ひょっとしたら9年前の、あの時期ぐらいがギリギリだったかもしれんなあ──今日たまたまこの昔の原稿を発見して、しみじみとそんなことを考えたのでした。
今回のこの文章も、きっと解る人にしか解らないのでしょうがw
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