ノンフィクションW『映画で国境を越える日』
【3月20日特記】 WOWOW から録画してあったノンフィクションW『映画で国境を越える日 ~映像作家・ヤン ヨンヒという生き方~』を漸く観た。良いドキュメンタリだった。
映画『かぞくのくに』の監督ヤン・ヨンヒを追ったものだ。
『かぞくのくに』は、テーマ自体が非常にセンセーショナルであるということを最初から割り引いしてしまったために、僕自身はそんなに高い点をつけなかったのだけれど、良い映画であったことは間違いない。
僕が一番信頼を置いている「キネマ旬報ベストテン」で第1位に輝いたほか、国内外で多くの映画賞を受賞した。
このドキュメンタリの良いところは、この映画を観た人にとっては、その裏側や深いところにあるものを見せて掘り下げてくれ、まだこの映画を観ていない人にとっては、そこへと導く見事な紹介と宣伝になっているということだ。
つまり、ヤン・ヨンヒという人間を、あるいは彼女の作品を、知らなければ分からないというドキュメンタリではなく、知らない人にも知っている人にも、等しく問題を提起して考えさせるところが優れているのである。
映画を撮っている最中から密着取材は始まっており、従って彼女の心の動きと世間の反応を時系列で追うことができる。
テーマは南北朝鮮であり、それを敷衍した国境であり、そう、やたらと重いのである。しかし、ドキュメンタリの作りは、ヤン・ヨンヒ自身の性格をも反映してのことだが、どことなく軽やかである。
この番組が将来パッケージ化される計画があるのかどうか知らないが、僕は映画『かぞくのくに』とセットで見ることをお勧めしたい。
つまり、映画を観た人は併せてこのドキュメンタリを、このドキュメンタリだけを先に見てしまった人はどこかでこの映画を観ると、もっと思いは深まると思うのである。
いずれにしても、そう、ヤン・ヨンヒの思いがしっかりと伝わって、観ている人たちの思いもしっかりと深まる作品であった。そういうのってとても大切なことだと思う。
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