映画『すーちゃん まいちゃん さわ子さん』
【3月10日特記】 映画『すーちゃん まいちゃん さわ子さん』を観てきた。良い映画だった。御法川修監督。
この珍しい苗字を見て、(知ってる人は皆そう思ったと思うのだが)僕はこの監督はみのもんたの息子か甥か何かに違いないと思ってちょっと腰が引けたのだが、そうではないと判って観に行った(笑)
3人の独身女性、すーちゃん(柴咲コウ)とまいちゃん(真木よう子)とさわ子さん(寺島しのぶ)の物語。
すーちゃんとまいちゃんは34歳、さわ子さんは2人より少し上の39歳。すーちゃんはカフェのシェフ、まいちゃんはメーカーの営業、さわ子さんは在宅のウェブ・デザイナー。
すーちゃんは田舎から上京して一人暮らし。まいちゃんも一人暮らしだが勝手に部屋に上がり込んむような男がいる。そして、その男には妻子がある。まい子さんは実家で母と一緒に寝たきりで認知症の祖母のケアをしている。
この辺りのキャラの描き分けが巧い。それぞれの登場人物の関係性もしっかり構築できている。
だが、典型的に巧い脚本というわけでもない(脚本は『トウキョウソナタ』を共同で手がけた田中幸子という人だ)。起承転結というか、話の構成はあまり座りが良いとは思わない。
それから、間引いている部分がけっこうあって、そこがどうしてそうなったのかが結構気になってしまう。
──例えば、3人が同じレストランでバイトしていたことは分かるが、そもそもそこが出会いだったのかどうか。どうしてまいちゃんはすーちゃんを写真館に呼び出したのか。まいちゃんは結婚相談所に登録してからすんなりとことが進んだのか、それとも紆余曲折あったのか、等々。
あるいは編集で落ちてしまったのかもしれない。しかし、いずれにしても、端折るのは構わないのだが、そこに「説明のないまま」という感じが出てしまっているのはあまり感心しない(まあ、僕だけが感じたのならそれで良いのだが)。
だが、台詞は(どの程度が原作のままなのか知らないが)すごく良い。
そもそも女性同士の友情を扱った映画って意外にないものである。そして、その友情がこんな風に暑苦しくない、自立した大人たちのものとして描かれている映画は少ない。
そういう意味で非常に後口のさわやかな映画だった。所謂「女性映画」の範疇に入るのだろうが、描いているものは人生という大きなものだから男性が観ても拒否感がない。彼女たちの寂寞感は非常によく分かる。
そう、「寂寞」なのである。決して「寂寥」ではないような気がする。
そして、3人の女優が三者三様に個性を発揮して魅力的な人間を演じてくれているので、男性ファンが女優を見るという見方もあるのではないだろうか(例えば、僕は特に真木よう子が好きだ)。
「遠い未来のために今を決めすぎることはない」というすーちゃんの台詞を聞いて、そうだよな、その通りだよな、と深く同意してしまった。そういう良い台詞がたくさんある良い映画である。
こんなしっかりした大人ばっかりだったら良いのにな、とふと思ってしまった。
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